「大阪からこの国を変える」という橋下徹・大阪市長。実は5月の大阪市議会で、一つの試みが実を結んだ。民主党が2009年の総選挙で掲げながら放置した国民との約束を、大阪で先に実現しているのだ。原英史氏(大阪府市特別顧問)が、物議を醸した「職員基本条例」についてレポートする。
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職員基本条例で、よく問題にされたのが、「D評価2回で免職」という点だ。不正確に理解されていることも多かったので、説明しておこう。
まず、人事評価については、相対評価を導入した。従来の人事評価は、5段階で最低の「D評価」を受けるのは1万人に1人という割合で、頑張って成果を出した職員もそうでない職員も「差をつけない評価」だった。これではやる気や努力は生まれない。そこで、「S」5%、「A」20%、「B」60%、「C」10%、「D」5%という比率を定め、必ず最高評価と最低評価の職員を一定比率出すようにした。
D評価が2回続くような職員は、適性に問題のある可能性がある。こうした職員は、勤務実績をきちんとチェックし、問題ある場合は指導研修の対象とすることにした。指導研修を経てもなお適性を欠くと判定される場合は、免職の手続きを取ることも定めた。「D評価2回で、いきなり免職」のように誤解されることがあったが、そんな乱暴な制度ではない。
「免職」というと、「公務員の身分保障があるのにできるのか?」と思う人がいるかもしれない。先にも触れたが、“よほどの理由”があれば免職にできる。身分保障の限界という意味で、「分限免職」と呼ばれる制度だ。法律上は、国でも地方でも、「勤務実績がよくない」「必要な適格性を欠く」「廃職又は過員(つまり、ポストがなくなったり、人員過剰の場合)」といった事由があれば、免職できると書いてある。だが、発動されることは稀で“抜かずの宝刀”のようになっていた。
だから条例で、「こういう場合には処分対象とする」という標準を示し、一方、不当・性急な処分がなされないよう手続きもきちんと定めた。ルールに従い、本来、法律で定められている分限免職が適正に発動されるようにしたのだ。
※SAPIO2012年6月27日号