今夏にはロンドン五輪が開催される。日本を「スポーツ大国」と感じている日本人は少ないかもしれないが、数字ははっきりと日本がアジアの超スポーツ大国であることを物語っている。それはMLB1つを見ても明らかだ。
現在、MLBに在籍する日本人選手は、ダルビッシュ有ら15人。韓国選手はインディアンズの外野手秋信守(チュ・シンス)ただ1人。台湾選手はナショナルズの王建民(ワン・チェンミン)と今季中日から移籍した陳偉殷(チェン・ウェイン)の2人だけとなっている。
MLBでは、12年シーズン開幕時点で、856人の一軍登録選手のうち28.4%に当たる243人が外国人選手。国別に選手が多い順に挙げると、ドミニカ、ベネズエラ、カナダ、そして日本。カナダはドラフト対象となっているため、ドラフト外の国では、日本は3番目にMLBに多く選手を輩出している国ということになる。ちなみに台湾は全体で12位、韓国は14位だ。
「当たり外れの大きい中南米の選手に比べ、日本人選手には安定感があるので、指名しやすかった」
こう語るのは、メッツの環太平洋担当スカウトを務めていた大慈彌功氏(現・同担当部長)である。NHKのMLB解説を務める高橋直樹氏がその背景について分析する。
「日本の野球界には少年野球から中学、高校、大学、社会人、プロと底辺の広いピラミッドがあるため、豊富な実戦経験を重ねることができる。特に投手は先発だけでなく、セットアッパーやクローザーとしての経験も積んでいるため、MLBでもいろいろな局面で起用できる。そうでなければ、わざわざ日本にスカウトを派遣したり、ポスティングで高い金を投じたりしてまで獲得しようとはしませんよ」
確かに最近では、甲子園にまでMLBのスカウトが視察に訪れる。日本人選手の実力を認めているからこそだろう。しかも最近のメジャーリーグは、機動力や出塁率を求めるスモール・ベースボールに変化している。この点も、日本人選手が注目される理由とされる。 しかしながら、シドニー、北京両五輪で日本は韓国に敗れ、WBCでも日韓戦は通算4勝4敗の五分。WBCで投手コーチを務めた山田久志氏はこう語る。
「韓国はプロリーグ全体の選手層は薄い。でも、ナショナルチームとなると報奨金や兵役免除という“インセンティブ”をモチベーションにして戦うから、そりゃ強いよね」
とはいえ、それは“瞬間風速”的な強さにすぎない。韓国野球の英雄・李承ヨプ(イ・スンヨプ)は強いメジャー志向を示しながら、MLBにまったく相手にされなかった。一方、台湾の陳は中日での好成績を評価されてメジャーに移籍した。サッカー同様、日本野球の“底力”は本場からしっかりと認められている。
※週刊ポスト2012年6月29日号