“フェルメールイヤー”といわれる今年。この6月からは、初来日作品を含むフェルメールの代表作を見られる2つの展覧会が同時期開催されるとあって注目を集めている。
そのひとつ、初来日作品『真珠の首飾りの少女』が公開される『ベルリン国立美術館展』(国立西洋美術館)の初日(6月13日)には、開場前から150人が列をなした。
そして6月30日からはじまる『マウリッツハイス美術館展』(東京都美術館)では、12年ぶりとなる名画中の名画『真珠の耳飾りの少女』が披露される。
フェルメール展を開催すればその美術館の集客記録が塗り替えられるともいわれ、日本での人気は年々高まる一方。『フェルメール 静けさの謎を解く』(集英社新書)の著者で、アートライターの藤田令伊さんは人気の秘密をこう語る。
「フェルメールの作品の大きな特徴は独特の“静けさ”です。強い自己主張や見る者を驚かすような派手な表現はありませんが、寡黙で繊細な、奥ゆかしさが日本人のメンタリティーにしっくりくるため、好まれるのでしょう。宗教や神話ではなく、日常生活を題材にしているのも身近に感じられる理由だと思います」
現存するフェルメール作品はわずか30数点といわれ、世界各地に点在する作品を“巡礼”するファンも多い。使う色の数をぐっと抑えているにもかかわらず、背景をシンプルにすることで描く対象を際立たせる──そんなひそやかで謎めいた作風が、ファンを惹きつけてやまないのだという。
ちなみに『真珠の耳飾りの少女』のイヤリングはかなり大きなもの。しかし17世紀にはこれほど大きな真珠を天然モノで得ることは不可能だったという説が濃厚だ。
「これはフェルメールのひそかな“嘘”──演出ということになります」(藤田さん)
なぜそんな演出をしたのかは謎のままだ。
※女性セブン2012年7月5日号