“婚活詐欺女”こと木嶋佳苗被告による首都圏連続不審死事件の裁判を傍聴し続けたノンフィクション作家・佐野眞一氏は、同事件に切り込んだノンフィクション『別海から来た女』(講談社)を上梓した。佐野氏は木嶋被告に惹かれる被害男性たちをどう見たのか――ノンフィクションライター・柳川悠二氏が、佐野氏に聞いた。
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――なぜ男たちは木嶋被告に吸い寄せられるように金を振り込んでしまうのか。そのひとつの答えとして佐野さんは『別海から来た女』の中で、「見知らぬ他人からいきなり暮らしの中に入り込んでくるメールは、整ったフォントによって公共性をまとい、危険をカモフラージュする」と書いています。
「そうだね。手紙とか、他の伝達手段であれば、清書をしたり、何度も読み返したりして、送る前に一度、ためらいがあるものです。そうしたことをせずに、書いた文章を即座に電送してしまうメールというのはものすごく凶暴性をはらんでいる。
そして、デジタルのフォントで書かれたメッセージというのは、届いた時点でパブリックな言葉になるために、受け取る側は警戒心を持たないのです。普段は寡黙な木嶋が、メールになると途端に饒舌になるのは、メールだとウソで塗り固めた自分をぼかすことにつながると、潜在的に理解していたからかもしれません。
だからこそ、男と会う際にはすぐに眠らせて黙らせちゃうし、女友達なんてのも作らなかった。相手が女だと本性を見抜かれてしまうことを彼女は分かっていたのでしょう」
――被害者たちに、共通した特徴は見受けられましたか。
「当然、婚活サイトを利用するぐらいだから、みな結婚への焦りはあったでしょう。過保護に育てられ、マザコン気質の男も多かった。
木嶋が逮捕された日まで同居していた田中直樹氏(仮名)だって、母親は亡くなっているけど、木嶋との同居に反対した姉がいた。自宅に備え付けてあった火災報知器がすべて木嶋に取り外され、殺人を犯す寸前に木嶋が捕まって事なきを得たわけだけど、このお姉さんがいなければ彼もどうなっていたか分からない。
簡単にいってしまえば、自立できていない男ばかりんだよ。だから『うちのパパは弁護士で、つい最近はイギリスにゴルフに行っていた』なんていう木嶋の荒唐無稽な話を信じてしまうんだ」
――最後に、以前から佐野さんは東電OL殺人事件が映像化されるならば、渡辺泰子役は寺島しのぶが相応しいと話されていました。この首都圏連続不審死事件が映像化されるのであれば、木嶋被告役は誰が相応しいと思いますか。
「うん、やっぱり寺島しのぶだよ。役柄のために太りさえれば、彼女は木嶋を演じられる。渡辺と木嶋というふたりの女は、ある種、裏表の関係だからね。ぜひ、映画化されてほしい。ついでに言えば、小学生の頃の木嶋が500万円の預金通帳を盗む子役には、芦田愛菜ちゃんを起用したいね。所属事務所が絶対に許さないだろうけどね(笑)」