昨年来の稚魚の不漁に伴う価格高騰の影響で、各地のウナギ専門店は値上げを余儀なくされ、廃業も相次いでいる。
そもそも日本人が口にしているウナギの80%は、中国や台湾から輸入されたものである。中国では国内で獲れるニホンウナギの稚魚に加え、欧州からも稚魚を空輸し、養殖して日本に輸出している。これは日本のウナギとは別種の「ヨーロッパウナギ」という種で、脂が多く白焼きには適さないとされ、中国国内で蒲焼きに加工してから輸出されることが多い。
調理後の見た目は、ニホンウナギとほとんど区別がつかないのが特徴。スーパーで安く売られる蒲焼きや、廉価で提供される鰻丼には中国産ヨーロッパウナギが使用されることもある。
だが、このヨーロッパウナギは「絶滅危惧種」に指定されている。2007年、ヨーロッパウナギの絶滅の危険性を指摘したEUが、稚魚の輸出を規制する方針を発表し、ワシントン条約締約国会議で確定された。つまり条約で流通量が減っていたところに、不漁が重なったというわけだ。
世界には他にも、アメリカ産やオーストラリア産のウナギも存在する。この緊急事態を受け、最近ではアメリカウナギの成魚輸入が増えているが、
「脂が少なく、パサパサしているため、味は良くない。また天然ものが多く形がバラバラなので調理がしにくい。ニホンウナギやヨーロッパウナギの代替品としては満足のいく品ではない」(都内の専門店店主)
という。そのうえ、
「万一逃げ出したりして自然に戻った際に、生態系を脅かしかねない。輸入するのは問題ないですが、ニホンウナギの保護のためにも、管理を厳重にするよう指導しています」(水産庁増殖推進部)
と、あまり歓迎されていないようだ。
稚魚が不漁である原因は環境変化や乱獲のためなどといわれるが、「ハッキリした理由は不明としかいいようがない」(同前)という。過去には、5年不漁が続いたかと思えば、その翌年に急に増えたこともあった。ウナギ不足には有効な対策がとれず、限られた資源で凌ぐしかないのが現状なのである。
※週刊ポスト2012年6月29日号