昨年来の稚魚(シラスウナギ)の不漁に伴う価格高騰の影響で、各地のウナギ専門店は値上げを余儀なくされ、廃業も相次いでいる。
シラスウナギの輸入ものでは、今年3月に1キロ252万円の根をつけた。ちなみに昨年の相場は1キロ60~80万円だった。
国民食として親しまれてきたウナギの危機を重く受け止めている人は多い。週刊漫画誌『モーニング』で、「主人公がうなぎ料理を食べ続ける」という異色のテーマを描いた『う』を連載中のラズウェル細木氏はこう語る。
「私もウナギの漫画を描いていながら、将来の展望が暗いと聞き、辛く苦しい思いです。大好きなウナギが食べられないなんて、我慢できません。今年の夏が最後のチャンスかもしれない。どうせ高いのであれば、今年の土用の丑の日は、ぜひ専門店でうまいウナギを食べようじゃないか、と呼びかけたいですね」
これは多くの“ウナギファン”の本音だろう。 ただその一方で、ウナギの老舗・『五代目・野田岩』(東京・麻布)店主の金本兼次郎氏は、世間に蔓延する悲観論に対し、「過度に不安がる必要はありません」と話す。
「私は今年で84歳になりますが、これまでもウナギには色々なことがありました。当店も1961年頃、天然ウナギが冬期不漁となり、12月~3月頃、店を休業させていた時期があります。それが14年間続きました。
確かに今は不漁で値段が高騰していますが、私からすればあまり驚きません。いずれ収束に向かうでしょうから、心配無用かと思います」
その言葉を信じたい。
※週刊ポスト2012年6月29日号