国内

死亡説出た志茂田景樹 twitterで「生きてたのか」といわれる

自らの死亡説を語った志茂田景樹氏

 ツイッターでいま、若者から絶大な支持を受けている直木賞作家の志茂田景樹氏(72才)。あらゆる人生相談に、真摯にツイートで応じ、フォロワー数は17万人にまで増えている。フォロワーから“カゲキちゃん”の愛称で呼ばれる志茂田氏は、日々何を感じてつぶやいているのだろうか?

 * * *
――ツイッターと小説で文章を書くことで違いはありますか?
志茂田氏:ツイッターでポンポコ文字を打っちゃうと文字数がオーバーして、文意を変えずに文章を詰めなきゃいけないときもよくあるんですけど、それは割と簡単なんですよ。その作業は、原稿用紙に文章を書いてる作業に近いです。ツイートする画面が原稿用紙だと思えばいいだけですから。

――膨大な数のフォロワーにフォローされることについてどう思いますか?
志茂田氏:ぼくのつぶやきを実際どのくらいの人が見てるかわかりませんけど、答える以上はフォロワーの全員が見ているという意識で書いています。本当はときどき極端なことを書きたい欲求にかられますけど、それはあえて避けてます。荒々しい表現や極端ないい方が思い浮かんでも、そういうものはいつか創作の中で使えばいいんじゃないかなって。

――フォロワーからの相談を受けて、いまの若者について思うことは?
志茂田氏:ぼくらの頃のほうが、ある意味で早急で短慮だったかな。それに比べて、いまの若い人は慎重すぎるところがあるんですよね。周りの様子を見ながら出方をうかがう。自分が出られると思ったら出ればいいんだけどね。慎重すぎるということは、きっと自分を抑えてしまってるんだと思います。

 会話なんかも聞いていると、まぁ悪くいえば当たり障りない、よくいえばそつがない。あるいは社交的なテクニックとしての会話ですね。ぼくらの頃はそんな社交術はなかったから、ある意味ではフランクになれたということですけどね。だから逆にいまの若い人は、自分で心を少し押しつぶしちゃっているぶん、ストレスのかかり方もぼくらの頃よりは強いはず。つぶやきを見ていると、かなり心のリズムを崩していると感じますね。

 まぁ、時代背景もあるでしょうね。ぼくらの頃は、日本の経済もまだ上昇線を辿っていた時代ですよね。いまの若い人にとっていまの世の中、核となっている社会や政治、経済の部分で未来にあまり希望を持てないんじゃないですかね。5年、10年先の自分を描きにくくなっているんですね。ぼくらの頃は目標とする人や、あんな風になりたいという“ジャパニーズドリーム”みたいなものがまだあったんですけど、いまの若い人にとっては周囲を見渡しても目標にする人がいない。全くいないわけではなくて、若い人でも事業で超成功していたりとごく少ない突出した人がいるけど、目標にはしない。

 フェイスブックの創業者(マーク・ザッカーバーグ)の成功なんかも、「あれは特別すぎる」と目標にできないんです。先が見えないなら、君らが風穴を開けて突破口を作ればいいじゃないかという人もいるだろうけど、それがしづらい閉塞感がある。こと就職に限らず、社会全体がいまの若い人にとって厚い殻のような閉塞感があるのかなと。だからそのなかで心のリズムを崩していく若い人は多いですよね。恋愛、仕事、そしてもうひとつは周囲との対人関係、なかんずく家族との関係、この3つがいまの若い人にとって、とても閉塞感を強める課題になっていると思いますね。

――では、ネットで流れたご自身の死亡説についてお聞きします。
志茂田氏:何年かに1回くらいはそんな風ないわれ方をすることはありますよね。ツイッターでも「生きてたのか」なんていうのもいますしね。そういうの、面白いですけどね。そんないい方されて“ムカッ腹ツイート”したってダメなの。どうしたらしゃれたいい方で相手がその後に何もいえなくなるかなっていうことは考えますよね(笑い)。こないだもね、「オハヨウ、変態ジジイ!」なんてツイートがきたから、「オハヨウ、変態でない非常識なキミ!」」なんて書いたら、「偉い」とか「すごい」とかリツイートされていましたね。

 ネットのあの類のことにいちいちムカッ腹立っちゃだめですよ。たまに誰かのタイムラインで、何かいわれて正面から反論したりムカッ腹立てたりする人がいますけど、そんなことをやっても水かけ論。それだったらうまくかわして相手をいかにギャフンといわせるか。そういう意味ではツイートっていうのは頭の訓練にとてもいいですね。だから若い人もね、単に「どこそこにいるなう」みたいなバカみたいなこと書かないで、せっかくなんだから、ちょっと頭の訓練になるんだぞってことで少し考えてツイートしてもいいんじゃないかなっていう気がしますね。

【志茂田景樹(しもだ・かげき)】
1940年3月25日、静岡県出身。小説家。1980年に『黄色い牙』で直木賞を受賞。90年代には『笑っていいとも!』などのバラエティー番組にも出演し、タレントとしても活躍。1999年に「よい子に読み聞かせ隊」を結成し、読み聞かせ活動を中心に絵本・児童書作家としても活動している。

関連キーワード

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン