世界的な超金融緩和によって溢れだしたマネーはこれからどこへ流れ込もうとしているのか。その先鞭を付けるのは機関投資家やヘッジファンドだが、その動向に詳しいパルナッソス・インベストメント・ストラテジーズ代表兼チーフ・ストラテジストの宮島秀直氏は、アメリカの「エグザバイト革命」に彼らは大いに注目していると指摘する。その恩恵をいち早く受けるのはどういう業種、企業になるのか、宮島氏が解説する。
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目下の外国人投資家の最大の関心事といえば、徐々に近づきつつある米大統領選挙だ。直近の世論調査を見ると、現職オバマ大統領と対抗馬となる共和党ロムニー候補との支持率が、かなり接近してきた。オバマ再選を楽観視できる状況ではなくなっている。
そもそも、オバマの支持率は3月末時点で40%台半ばと低迷していた。戦後に誕生した米大統領11人のうち、選挙が行なわれる年の3月末の支持率が50%以下で再選されたのは、ジョンソンのみ。そのジョンソンは、辛うじて再選を果たしたものの、低支持率での勝利のため、当選後、年末にかけて株価は下落し、経済運営が困難を極めたことで知られている。
そこで、オバマ陣営としては、支持率を安全圏と呼ばれる50%台に早急に引き上げる必要がある。そのために、今後、大々的なテレビCMによるキャンペーンを展開すると予想されている。
これは、2008年の大統領選挙における民主党代表選で、オバマがクリントンに勝った勝因が、テレビCMを中心としたメディア戦略にあったことを、選挙のコンサルティング会社であるキャンペーン・メディア・アナリシス社のアナリストが、ヒアリングで明らかにしたのだ。そして、大々的なテレビCMを展開するには、オバマ陣営の選挙資金に最低でも100億円程度の不足が生じると推計している。
オバマ陣営は、その巨額の不足資金をどう調達するのか? 米民主党幹部と情報交換を活発に行なっている複数のヘッジファンドから、選挙資金の不足分は、フェイスブックの創業者であるマーク・ザッカーバーグがサポートをするというコメントが多数聞かれている。「オバマ大統領の再選にザッカーバーグが決定的な影響を与える」というのは、コンセンサスといっていいようだ。
昨年の一般教書演説で、オバマ大統領は、「フェイスブックやグーグルなどのウェブカルチャーは世界の人々の人生を変える」と賛辞を送り、ザッカーバーグとの距離が急速に接近したと言われている。
以後、お互いに自宅を訪問したり、ザッカーバーグが10万人のフェイスブック登録者とリンクさせた大統領とのタウンミーティングを開催したほか、フェイスブックのCOO(最高執行責任者)で世界的に著名な女性経営者であるサンドバーグの自宅で、選挙資金集めを目的とした会費3万5000ドル(約280万円)のパーティーを開いたりと、強力なサポート体制が築かれつつある。
オバマ大統領および米国政府に影響力を強めているのは、実は、ザッカーバーグ=フェイスブックだけではないことが、米国議会の公表データから明らかとなっている。フェイスブック以外にも、グーグル、ネットフリックス(オンラインDVDレンタル会社)といった米国を代表するウェブ企業がロビー活動を行なっているのだ。上記3社のロビー活動費は足下で急増しており、昨年10‐12月期だけで合計450万ドル(約3億6000万円)に上る。
こうしたウェブ企業のロビー活動の目的は、次のようなものだ。米政府のインターネット上の個人情報保護政策の調整や、映画や音楽などの複製/転送規制の緩和、そして、中国政府などのネット上の情報統制に対する国家的な抗議を働きかけること、などである。
さらに、機関投資家が最も注目しているのが、これらのウェブ企業が加速度的に膨張しつつあるネット上の情報処理量に対応した、公共的なネットワーク・インフラの構築を強く要請していると見られる点。すでに、ネット上の情報量は「エグザバイト」(10の18乗=100京バイト)の時代に突入していると見られ、ネット上で起きつつある「エグザバイト革命」に対応したインフラをウェブ企業が必要としているのである。
※マネーポスト2012年夏号