現在も余波の続く6月4日の小川敏夫・前法相「指揮権発動」発言――。小川氏は、小沢一郎氏の陸山会事件をめぐり、東京地検特捜部の田代政弘検事(当時)が虚偽の捜査報告書を作成したとされる問題について指揮権の発動を決意したが、総理の了承を得られなかったと述べた。
多くのメディアは政治と検察の均衡を損なうとして批判的に報じている。その真意をジャーナリスト・青木理氏が質した。
――昨年末、関係者の間では麻原死刑囚の執行も間近と取りざたされていました。
小川:僕の大臣就任はオウムの平田(信)が逮捕された後の1月13日。その前には一切麻原の件には関わらなかった。その後逃亡犯が次々と出てきたから、とりあえず消えたんじゃないか。
でも実際、彼らもやりたかったと思うよ。共犯者の裁判が終わり舞台が整ったなんてことが新聞で盛んに流されていましたから。あのマスコミへのリーク情報を見ると、執行への環境作りをしようとしたとしか思えない。
――小川さんの(指揮権)発言に対しても大手紙から一斉に批判がでました。
小川:各社横並びの記事ですよ。法務官僚が総力をあげて法務記者クラブにふきこんだんでしょう。
――田代検事が不起訴になったら検察審査会にかければよい、との社説(朝日)もありました。とはいえ、検察が捜査をするつもりがなければ証拠も何もない。
小川:そうですし、検察審査会は捜査機関じゃない。僕は今回の発言を政治介入だと批判記事を書いた記者に聞きたいですよ。じゃああなたたち、検察がこれは『田代の記憶違い』と処理したときにあなたたちはその処分の仕方を褒めるかと。国民は怒りますよ。結局、あんな風に御用記事を書き、退任会見をさんざん批判した後に、僕のことは一切話題にしない。
――ところで、なぜ大臣の座を外されたんですか?
小川:さあ、僕はなぜクビになったのかもわからない。
――ひょっとすると指揮権発動の件が引き金ですか。
小川:それはわからない。でも僕の存在を快く思っていない人間がいたのは事実でしょう。実は(首相に相談後の)5月中旬に、僕が土地を不正購入したとかのデマが一斉にマスコミに流れた。党幹部が心配して大丈夫かと。まったくの根も葉もない話ですよ。6月中旬に僕が告発されるとかの話にまでなっていたようです。
―一体誰がマスコミに情報を流したんですか。やはり法務、検察ですかね。
小川:それは証拠がないからわからないけど……。
――彼らは怖いですよ。三井環さん(※)の事件はご存じでしょう。あの程度で有罪にされるんだったら、法務省の役人の半分ぐらいは有罪にされるんじゃないかって気がしますけどね。
小川:僕もそのうち仕返しで捕まるかもしれないな(笑い)
※2002年4月22日、大阪高等検察庁公安部長の三井環氏が詐欺容疑で逮捕。その後、公務員職権濫用罪などで起訴され、懲戒免職に。起訴内容は前例にないほどの微罪。三井氏は逮捕前、検察の裏金問題を告発するつもりだったため、口封じによる逮捕と主張している。
※週刊ポスト2012年7月6日号