北朝鮮では過去2回、ミサイル発射実験から数か月以内に核実験が行なわれてきた。今回、北朝鮮は核実験の可能性を否定しているが、もちろんそれを鵜呑みにはできない。そんな中、ジャーナリストの惠谷治氏が重要な情報をキャッチした。
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北朝鮮の核管理(核のボタン)は本誌で幾度か紹介してきたように、旧ソ連が用いた「PAL(パーミッション・アクション・リンクス)」と呼ばれるシステムを導入していると思われる。全ての核兵器施設や装置に電子ロックが何重にも装備され、KGB将校が「安全装置解除コード」を入力しない限り、格納庫の扉の開閉や起爆装置の起動ができない仕組みだ。
北朝鮮の核は“北朝鮮版KGB”と言われる国家安全保衛部(秘密警察)が管理していることは、脱北者らの証言で明らかになっている。金正日の死後、PAL方式の「安全装置解除コード」を知るのは、金正恩のほかに国家安全保衛部の実質トップだった第一副部長の禹東則のみとなった。
しかし、4月の人事では、禹東則は国防委員を解任され、党政治局を離れ、総政治局組織担当副局長だった金元弘大将が国家安全保衛部長に新任された。韓国情報によれば、禹東則は脳出血で倒れたと言われているが、権力闘争に敗れた可能性も否定できない。
いずれにせよ、金元弘が国家安全保衛部長に就任した時点で、PAL方式のコードは更新され、金正恩と金元弘の2人が握ったと考えられる。また、金正日亡き後の真の権力者である金慶喜もPALコードを握った可能性がある。
北朝鮮の過去2回の核実験は、ミサイル実験とセットで3か月以内に実施されている。信頼すべき情報当局者は、実施日についてこう表現した。
「注意すべきは月曜日です」
その言葉を聞いた時は理解できなかったが、調べてみると、1回目の核実験(2006年10月9日)も2回目(2009年5月25日)も、そして今年4月30日のいずれもが月曜日であることが判明した。
よって核実験は、月曜日に行なわれる可能性が高いが、その理由は不明である。
※SAPIO2012年6月27日号