自公民3党の談合によって合意に至った消費税増税法案。東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏は、このニュースを報じる新聞各紙の「論説」と「報道」が割れたことが興味深いと語る。以下、氏の解説である。
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民主、自民、公明の3党が消費税率引き上げで合意した。増税と一体だったはずの社会保障改革はといえば、新設する「社会保障制度改革国民会議」に重要課題を棚上げした。
このニュースを報じる各紙紙面が面白い。社説とニュース面で正反対の展開になったのだ。たとえば、朝日新聞。6月13日付社説は最低保障年金の創設と後期高齢者医療制度について、民主党内から廃止や棚上げに応じれば増税先行になるという声が湧いていると紹介したうえで「しかし、増税先行という批判は、筋違いだ」と真っ向から党内論議を批判した。
ところが、3党が合意した翌16日の朝刊3面では「まず増税ありき」「社会保障は置き去り」という大見出しを掲げて「負担増が暮らしを直撃する」と報じた。
毎日新聞はどうか。社説は「『決める政治』を評価する」(16日付)との見出しで「歴史に恥じぬ合意として率直に評価したい」とまで持ち上げた。ところが、ニュース面では「民主譲歩 論点置き去り」とか「決着優先 際立つ迷走」と批判している。
論説と報道は互いに独立というのが建前だから、主張と事実の見方が違ってもおかしくはない。だが、これほど違うと読者もとまどう。私には論説委員が財務省のレクチャーにどっぷり染まってしまい、現場の記者のほうが平衡感覚を保っているように思える。
※週刊ポスト2012年7月6日号