投資信託マーケットは、今年に入ってからも非常に厳しい状況が続いていた。しかし、足下ではようやくマーケットに変化の兆しが出てきた。4月設定のファンドで1300億円を超えるものが登場したという。リッパー・ジャパンのファンドアナリスト、篠田尚子氏が解説する。
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4月25日に設定された『日興JFアジア・ディスカバリー・ファンド』の設定額が1300億円に達した。1本のファンドの設定額が1300億円を超えたのは実に4年ぶりのことである。
このファンドは、日本を含めた、中国、インドネシア、韓国、インド、マレーシアといったアジア各国の企業の株式を投資対象とするもので、従来のものと比較して特に目新しいものではない。
運用内容が近い他のファンドに目立った資金流入が見られないことから、今のところ、アジア関連企業に投資するファンドが今後のトレンドになるとは言い難く、『日興JFアジア・ディスカバリー・ファンド』が資金を集めたのは、“指名買い”の側面が強そうだ。
このファンドを運用するのは、JPモルガン・アセット・マネジメント。同社は『JFザ・ジャパン』というファンドも運用しているのだが、『日興JFアジア・ディスカバリー・ファンド』が1300億円を集めたのは、『JFザ・ジャパン』が一役買っていると思われる。
『JFザ・ジャパン』は、国内の株式に投資をするというオーソドックスなファンドで、2010年1月の設定ながら、今年3月末の基準価額(設定時は1万円)が2万2922円と極めて良好なパフォーマンスを残している。今年、リッパー・ジャパンをはじめ複数の投資信託の評価機関が優秀ファンドに選んでおり、個人投資家の間でも知名度が高まっているファンドだ。
その『JFザ・ジャパン』を運用するJPモルガン・アセット・マネジメントが、同じボトムアップ・アプローチ(個別企業の調査・分析により投資銘柄を選定する運用手法)を用いて、アジア関連企業を発掘するということで、『日興JFアジア・ディスカバリー・ファンド』が人気を集めたと見られる。
したがって、他のファンドへの広がりは期待しにくいものの、1本で1300億円以上集めた実績は、個人投資家にリスクテークの意欲が戻りつつあることを、確実に示していると言えよう。
※マネーポスト2012年夏号