日本は天然ガスのほとんど(国内消費の98%)をLNG(液化天然ガス)で輸入している。LNGは気体をマイナス160度程度まで冷却して液化するコスト、専用タンカーで海上輸送するコスト、再び気化するコストがかかるので、どうしても割高になる。いったいなぜこんなことを続けているのか。大前研一氏が解説する。
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日本は他の先進国に比べて天然ガスの利用率が低い。一次エネルギー供給構成比(2009年)を見ると、天然ガスの割合はイギリスの37%、カナダの30%、アメリカやドイツの24%に対し、日本は18%にとどまっているのだ。
なぜ、日本は天然ガスの利用が進んでいないのか? 理由は二つある。一つは、輸入価格が高いことだ。日本は天然ガスを長期契約で原油価格に連動する価格で買っているため、原油価格高騰によって輸入価格が高止まりしている。
だが、このところ非在来型天然ガスが世界各地で続々と発見されている影響で、在来型天然ガスの価格は原油に比べて大きく下がっている。だから市場価格でスポット購入しているアメリカやイギリスなどの購入価格は日本の4~6割だ。
しかも、日本は天然ガスのほとんど(国内消費の98%)をLNG(液化天然ガス)で輸入している。LNGは気体をマイナス160度程度まで冷却して液化するコスト、専用タンカーで海上輸送するコスト、再び気化するコストがかかるので、どうしても割高になる。
もう一つの理由は、海外からのパイプラインがないことだ。これまで日本は海外からのパイプライン敷設を拒否してきた歴史があるが、それはパイプラインのバルブを閉められたらどうするのか、相手に生殺与奪の権を握られてしまう、という意見が強かったからだ。
したがって今は中近東やインドネシア、マレーシアなどからLNGタンカーで輸入しているわけだが、この理屈はそもそもおかしい。バルブを閉められるような状況になったら、日本のタンカーが行ってもLNGを輸出してはくれないだろう。パイプラインだからリスクが高い、ということはないのである。
現にヨーロッパの国々は北海やロシア、アフリカから天然ガスのパイプラインを数千キロメートルにわたって敷いている。アメリカとカナダも、網の目のようにパイプラインを敷設している。日本も早急にロシアと平和条約を結び、サハリン(樺太)のガス田からパイプラインを敷いて天然ガスを輸入すべきなのだ。
サハリン南端から北海道・稚内までの宗谷海峡は約40キロメートルしかないので、やろうと思えば簡単にできる。ウラジオストクから新潟の日本海ルートも難しくはない。日本の場合は漁業権の補償という問題もあるが、それは安価なエネルギーの確保に比べたら些細なことだ。
※週刊ポスト2012年7月6日号