近ごろ、幅広い世代の女性にとって“福音”になると見直されているのが、低用量ピル(以下、ピル)だ。日本産科婦人科学会前理事長で慶応大学大学院医学研究科産婦人科学教授の吉村泰典さんは、ピルには女性のさまざまな不調を改善する力があるという。
「まず、ピルで生理をコントロールすることによって、生理不順が治り、いつくるのかが正確にわかるようになります。また、経血量は半分~3分の1くらいに減り、生理痛も3分の1以下に軽くなります。生理中には必ず寝込んだり貧血を起こしていた、という女性でも、普通に日常生活を送れるようになることが多いんです。
最近は働く女性が増えてきましたが、仕事をするうえでも生理痛は大きなハンディ。さまざまな不調から解放されることで、女性のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)は飛躍的に向上します」
ピルを服用し始める時期については、“セクシャルデビュー”、つまり初体験前でも問題ないと吉村さんはいう。
「もちろん避妊という効用もありますが、ピルにはそれ以外の“副効用”がたくさんあります。運動会や修学旅行、入試などに生理がぶつからないようにしたい、という10代の女性にも、ピルは非常に効果的。高校生になって、規則的に生理がきている子であれば、のんでかまいません」
実は、欧米では10代のころから服用する女性が多く、その普及率は30~40%。一方、日本ではわずか3%(厚労省研究班の推計・2008年)にとどまっており、これは先進国としては異例の数字だ。
ピルの副効用はまだ他にもある。更年期を迎えようとしている、あるいはすでに迎えている40代の女性にとっても、体の不調の改善に役立つのだ。
「更年期前の女性は、エストロゲンなどの女性ホルモンの減少にともない、体がドラスティックに変化し、さまざまな不調に見舞われます。ピルで女性ホルモンを補充することによって、この不調を緩和することができるんです」(吉村さん)
さらに、にきびに悩む女性にとっては、美肌効果も期待できるという。
また、結婚式や海外旅行など人生のイベントに合わせて生理を好きなときに起こせるようになるため、スケジュールが組みやすくなる。
こんなにたくさんのメリットがあるにもかかわらず、それ以上に副作用を懸念する声は依然として根強い。
「がんになるとか、妊娠できなくなるとかいうのはすべて間違った思いこみ。ピルの効用について正しく理解してもらいたいですね」(吉村さん)
※女性セブン2012年7月12日号