折からの節電要請とその空気に妻たちが敏感に反応するあまり、「ビールがぬるくなった」「炊きたてのご飯が食べられない」などと夫たちは不満タラタラの様子。
そんな「節電妻」の間で今、ブームとなっているのがエコ家電だ。商社マンのE氏(47)が話す。
「10日ほどの海外出張から帰ってきたら、寝室のエアコンが新しくなっていた。壊れたわけじゃないのに買い替えた理由を妻に問い質すと、自動で節電してくれるからだと説明されました。それは優れモノだと思いましたが、値段を聞いて驚きました。20万円ですよ。これじゃ、元を取るのに何年かかることやら……」
家電量販店では、エアコンに限らずエコ家電が売れている。昨年売れた扇風機は今年も健在。DC(直流)モーターを搭載したダイソンなどの1万円以上するものが売れ筋だという。
テレビの場合は画面の大きさが一番の購入動機になるが、消費電力が下がっていることが消費者のエクスキューズになっているという。家電ジャーナリストの安蔵靖志氏が話す。
「今の電化製品の消費電力はかなり下がっています。ただ年間で数百円の違いは使い方によっても変わる誤差みたいなもの。メーカーの売り文句に流されず、本当にいますぐ必要なのかを冷静に判断するべきです」
家電にはそれぞれの種類ごとに買い替えサイクルがある。エアコンや冷蔵庫では10年だ。当然のことながら、その期間内に元を取れるほど節電効果の高い商品でないと、節約どころか浪費になってしまう。具体的な費用対効果を検討せずに高額のエコ家電を買うのは本末転倒だ。
節電に詳しい神奈川工科大学准教授の矢田直之氏が話す。
「特にエアコンの場合、冷媒の仕組みを根本的に変えない限り、大きな節電効果は見込めません。つまり今の省エネエアコンの効果は限定的ということ。高いお金を出して買い替えるぐらいなら、今使っているエアコンの使用時間を減らした方がよほど大きな節電と節約の効果が見込めます」
エコ家電同様、売れ行きを伸ばしているのが「ワットチェッカー」のように電力使用料が可視化できる商品だ。5000円程度で手に入る。
「妻がこれでいつも数値をチェックしている。ある日、仕事で疲れて帰ったあと、ビールを飲みながらスポーツニュースを見ていたら、『今日はもう電気を使いすぎたから、あなた、テレビを消しなさいよ』と言われました。
ささやかな楽しみまで奪われて腹が立った。お前の方こそ、昼間、韓流ドラマを見ながらダイエットマシンを使うのはやめろ、と言ってやりたい。喧嘩になるので言えませんが」(銀行マンのF氏=50歳)
※週刊ポスト2012年7月6日号