高齢化社会に突き進んでいるニッポン。いまや65才以上の高齢者の10人に1人が認知症で、厚生労働省の予測では、2015年には300万人を超えるとも。“完治不能”で“進行する一方”と思われているが、ひと言で認知症といっても、治るものと治らないものがある。
まず、“治る認知症”に触れておくと、脳に脳脊髄液がたまる「正常圧水頭症」、新陳代謝を促す甲状腺ホルモンが減少しておこる「甲状腺機能低下症」などがある。これらは手術や足りないホルモンを補給することで治すことが可能な認知症だ。
一方、完治不能といわれるのが「アルツハイマー型」、「血管性」、「レビー小体型」、「前頭側頭型(ピック病)」の4つ。
だが、認知症全体の約6割を占めるといわれるアルツハイマー型も、ある段階なら“止める”ことができるという。そのためには、高齢者が発する、ある“サイン”に気づくこと。
「くどうちあき脳神経外科クリニック」(東京大田区)の工藤千秋院長は次のようにいう。
「認知症に伴う周辺症状のひとつに“うつ”がありますが、最近の研究で、もの忘れより先にうつ症状が出るケースがあるとわかってきました。このうつ症状を放っておくと、時間の経過とともに、うつ病性仮性認知症→早期認知症→認知症へと移行してしまう。
親が前よりふさぎがちになったり、後ろ向きなことをやったりというようになったら、うつを疑ってください。その段階なら、うつ病の治療をすることで認知症への移行を止めることができるのです」
認知症と診断されるのは、【1】記憶障害のほか、【2】会話の意味が通じなくなる「失語」、【3】対象が何であるかわからなくなる「失認」、【4】トイレの後始末など目的の行動が行えなくなる「失行」、【5】状況にふさわしい行動ができない「実行機能障害」などの症状が認められたとき。しかし、それ以前から“うつ”をはじめ、認知症の前症状はいくつも出ているという。工藤院長はその段階の認知症を“隠れ認知症”と呼ぶ。
「うつとともに、冷蔵庫がぐちゃぐちゃ、小銭のお釣りを貯めてしまうなどの状態に思い当たることがあれば、専門医の診察を受けることをおすすめします。本人には “最近は脳の健康診断っていうのがあるんだって。私も受けるから一緒に受けない?”といえば、カドもたちませんよ」(工藤院長)
※女性セブン2012年7月12日号