「節電の夏」が各メディアで叫ばれているが、「ビールがぬるい」「好きなTV番組を見られない」などの悲鳴も聞こえてくる。そして、これらの「自己流節電」の中には正しい知識がないまま、節電ムードに流されているだけの例もある。ここでは、一旦正しい家電の種類ごとの節電効果、節電方法を整理してみよう。
●エアコンはこまめに消してはいけない
経産省のデータによると、家庭の電力使用量は14時頃がピークで、エアコンが占める割合が58%と圧倒的に高い。そのためエアコンの節電が一番重要だ。節約アドバイザーの丸山晴美氏が説明する。
「室内の熱の73%は窓の外から入り込んだ熱によるものというデータがあります。それを遮断する――特に強い熱を持つ西日を遮断することが大切です。そのためにもカーテンは必ずかけましょう。
また、エアコンが電気を食うのはスイッチを入れて最初の10分ぐらいで、その時の消費電力は1000Wほどですが、その後は徐々に落ちて、1時間後には500W程度に、さらに使い続けると250W程度に落ちます。こまめにつけたり、消したりする方が節電効果が高いと思われがちですが、エアコンに関しては実は逆。1時間だけ消すくらいなら使い続ける方が効率的です」
●リビングにはLED電球、トイレには白熱球
電通総研の『消費気分調査』によると、ボーナスで購入検討している商品・サービスの第3位に、なんとLED電球が入った(全体の7.2%)。
「電球をLEDに替えるとその分の消費電力は6分の1、場合によっては10分の1にもなりますから1つ替えるだけで年間2000円程度の節約が可能です。しかもLEDはあまり熱を放射しないので、室内の温度が上がりにくく、エアコンの設定温度を1、2度上げられます。こうしたことを考えると、滞在時間が長く、エアコンを使うことの多いリビングの照明をLEDに替えると、大きな節電効果が期待できます」(神奈川工科大学准教授・矢田直之氏)
だが、蛍光灯をLEDに替えても、消費電力はせいぜい2分の1ぐらいにしかならない。また、短時間しか使わないトイレなどでは白熱電球で十分だ。
●冷蔵庫は大型の方が得
収容量450リットル以上のファミリータイプの冷蔵庫の方が、200リットル程度の一人暮らし用の冷蔵庫よりも電気代は安い。
「ファミリータイプが一番売れ筋なので、最新技術が蓄積されていますし、断熱材もいいものが使われているからです」(前出・丸山氏)
家電ジャーナリストの安蔵靖志氏によると、10年前の450リットルの冷蔵庫の場合、年間の電気代は2万円程したが、最新モデルは約6000円。価格は10万円台後半なので、節電効果の大きい商品なら10年でラクに元は取れるという。
●パソコンは90分以内に使うならスリープモード
パソコンは起動時と終了時にはある程度の電力が必要。つまり、1日に何度も使うのにこまめに電源を落とすと、逆に電気の浪費になる。目安としては連続して90分以上使わないならば終了した方がいいが、それ以下ならばスリープモードにしていた方が効率的だ。
●妻専用家電こそ節電を
実は意外に電気を食うのが女性専用家電だ。
「髪の毛をセットするドライヤーは10分使うと2.2円、電気コテなら10分で3.6円の電気代がかかりますが、これはテレビを1時間半つけていた時の電気代に相当します。また、ある美顔器の場合、30分で6.3円の電気代がかかり、これは24度の設定でエアコンの冷房を1時間使った時と同じです」(前出・丸山氏)
※週刊ポスト2012年7月6日号