6月12日、厚生労働省は、「生で安全に食べるための有効な対策が見いだせていない」として、7月1日から飲食店での生レバーの提供を禁止することを正式に決定した。
お役人は、庶民のささやかな楽しみを奪うことだけは徹底的にやるようだ。牛レバーの生食販売禁止を受け、厚労省は7月からレバ刺しの“脱法行為”の取り締まりに乗り出す。
例年、全国の保健所では、夏場の食中毒防止のための一斉取り締まりを7月に行なっていた。今年はその際に飲食店や食肉処理業者へレバ刺しに関する監視・指導が行なわれる。
「過去に生食メニューが確認された店舗を訪問して指導します。食中毒への有効な予防策が見つかるまでは、生食を禁止する必要があります」(厚労省食品安全部基準審査課)
違反した場合は2年以下の懲役、または200万円以下の罰金が科される。都内の焼き肉店関係者は苛立ちを隠さない。
「保健所から覆面調査員が来るなんて噂もある。“あそこの店は生で出しているぞ”とタレコミをするなど、店同士の告発合戦にもなりかねない」
が、こうもいうのだ。
「レバ刺しを出す方法はある。例えば、加熱設備があれば“焼きレバー”として生で出してもいい。お客さんに“生食は危険”と注意しさえすれば、あとはお客さんの判断になる。もちろん、提供は信頼できる常連さんだけですが……」
が、果たして本当にこんなことが可能なのか。厚労省に確認すると、
「焼くことを前提としたレバーの提供自体は問題ないので、食中毒が出たりしない限りは何もいえない」(食品安全部基準審査課)
とのこと。しかし、「実態として生食が行なわれていると見なした場合は、悪質なケースとして対処します」(同前)と釘を刺す。役人と焼き肉店主のイタチごっこ。肝が据わっているのはどちらか―。
※週刊ポスト2012年7月6日号