「使ったデータの詳細を知りたくて、厚労省に問い合わせました。従来から県を挙げてさまざまな健康増進策を打ってきたので、この順位を聞いても、すぐに対策は浮かびません。もう少し分析してみないと……」
こう困惑気味に話すのは、長野県健康福祉政策課の担当者だ。長野県といえば長寿県として知られ、平均寿命は全国で男性が1位、女性が5位と他県から模範とされてきた。ところが6月1日に厚生労働省より発表された“健康寿命調査”では男性6位、女性17位と、いまひとつの結果に終わってしまったのだ。
健康寿命とは、どのようなものなのか。2000年にWHOが打ち出した概念で、介護を受けたり寝たきりになったりせず、自立して健康に生活できる寿命を示す。日本国内で算出されたのは今回が初めてだ。
各県ごとの健康寿命データの元になったのは、全国約29万世帯約70万人を対象にして行なわれた国民生活基礎調査である。そのなかで「現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」の質問に、「ない」と回答した人の割合や年齢別人口などから求めたものだという。
平成22年完全生命表によると、日本人の平均寿命は世界一長く、女性86.30歳、男性79.55歳。ところが発表された「平均健康寿命」は、女性73.62歳、男性70.42歳と、平均寿命とはそれぞれ12.68歳、9.13歳の差があった。いくら平均寿命が長くても、寝たきりや介護が必要な状態が続くのは辛い。
研究班のメンバーで東北大学大学院医学系研究科の辻一郎教授は、健康寿命の意義についてこう話す。
「日本は世界最長寿ですが、その一方で認知症や寝たきりで苦しむ人も増えています。平均寿命の延び以上に健康寿命を延ばすこと、つまり健康で生きられる期間を長くすることが大切です。都道府県別に数値を発表したのは、地域格差を減らしていくうえでとても重要だと考えたからです」
※週刊ポスト2012年7月6日号