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川上弘美さん 被災者からの手紙で「書いていいのだ」と思えた

 作家・川上弘美さん(54才)の新刊『七夜物語』(朝日新聞出版刊)は、小学4年生の少女・さよが主人公。両親は離婚し、さよは仕事を持つ母とふたりで団地に住んでいる。ごくありふれた少女の成長物語かと思わせて、やっぱり川上さんならではの、不思議な冒険と出会いが繰り広げられる。

 念願を叶え、1年9か月にわたって新聞に連載、加筆した単行本が本書である。

 川上さんは楽しみながら連載を続け、クライマックス部分を書いていた昨年の3月11日、あの東日本大震災に見舞われた。

「そのときから新聞は隅から隅まで、震災と事故のむごいニュースばかりになってしまいました。その中で小説だけが異質に浮いている。こんなときにこんなに浮世離れした小説が載っていていいのだろうか、と心苦しく思わないではいられなかったです」

 考え込む川上さんのもとに1通のはがきが届いた。津波で父親を亡くした宮城県名取市の女性からだった。

“毎日、ニュースを見るのがつらすぎて、新聞が読めません。でも、そんな中で唯一小説だけは読んでいます。日常がまだこの世にあり、続いていると思えるから”という内容だった。

「この世界が続いていることに慰められる人もいるのだ、と知ることができて、私は書いていてもいいのだ、と思えるようになりました。ありがたいなと涙が出ました」

※女性セブン2012年7月12日号

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