小沢一郎・元民主党代表の夫人が書いたとされる手紙がメディアを賑わせている。手紙には小沢氏が放射能が怖くて家に閉じこもっていたなどと書かれており、小沢バッシングに拍車をかけている。
鈴木宗男・新党大地代表も、かつて「ムネオハウス」「疑惑の総合商社」など、いわれなき罪を被せられて貶められてきた経験を持つ。一連の騒動から10年経った。その間も含め、20年にわたる攻撃を受けてきた小沢氏の現状を鈴木氏に聞いた。
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小沢さんの夫人の手紙とされる文書は、騒動になってからすぐに私の手元にも届きました。この手紙が本物かどうかは私にはわかりません。ただ、冷静に見れば小沢夫人の署名はありますが、出所不明の代物です。また、極めてプライベートな内容であり、非常に配慮して扱う必要があると感じていました。
ところが、文書はすべての民主党代議士の議員会館のポストに郵送されたそうです。タイミングはまさに衆院で増税法案が採決される直前。民主党内は賛成派と小沢さんが引っ張る反対派で割れている状況でしたので、この文書を意図的に、恣意的に使おうとした者がいることは間違いない。政治的に利用されたわけです。
手紙を最初に取り上げた週刊誌は、もしかしたら社会のために良かれと思って報じたかも知れません。しかし、結果的に私生活のことが政治の場に持ち込まれ、国民の生活を左右する重大な法案の成否、そして政局にまで影響したとすれば、そのような利用のされ方によって報道の価値は貶められたといえるでしょう。
小沢さんを巡っては、政権交代直前に秘書が逮捕され、政治資金問題が噴出しました。しかし、当時、新聞やテレビで盛んに報道されていた「水谷建設から受け取ったヤミ献金1億円」は、裁判では争われてもいません。要するに、疑惑は事実ではなかったのです。
私も10年前、国後島の友好の家(通称「ムネオハウス」)の入札に介入したとか、ディーゼル発電所の建設受注の便宜を図って商社から巨額の賄賂を受け取ったなどと報道され、「カラスが鳴かない日はあっても、ムネオが叩かれない日はない」といわれるほどバッシングされましたが、結局は立件もされませんでした。小沢さんも私のときと同じくらいひどいバッシングを受けている。
検察当局のでっちあげの捜査も、情報リークも、小沢夫人の手紙とされる文書も、それを垂れ流す一部報道も、最初から「小沢叩きありき」、「宗男叩きありき」だったということでしょう。
※週刊ポスト2012年7月13日号