政局が混迷を極めるなか、経済アナリストの森永卓郎氏は、野田佳彦首相を中心としたグループの政権が続くか、あるいは小沢一郎氏が橋下徹氏と手を組んで政権を奪取するか、2つのシナリオがあると分析している。そのシナリオによって資産防衛の方法は大きく変わってくるという。以下、森永氏の解説だ。
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野田・前原・谷垣グループ政権となるのか、それに反対する小沢・橋下グループ政権となるのか。現状では予想はし難いですが、その行方によって日本経済の未来はもの凄く変わるとみています。
どちらの政権シナリオが望ましいかは、その人が金持ちかそうでないか、自らのキャッシュポジションなど立場によって違います。さらに、どちらの政権になるかで、資産防衛術も2つのシナリオが考えられます。
まず、投資に回せるタネ銭をすでに十分持っている人には、野田グループ政権の方がおいしい。このシナリオでは、日本経済の復活はいったん恐慌を経た後となる可能性が考えられる。恐慌まで行かなかったとしても、不動産や株式が大バーゲンセール状態となり、タネ銭のある人は一気に買い占めが可能となります。
株でいえば、メガバンクや不動産、なかでも倒産の懸念が少ない業界トップの銘柄などが狙い目になります。こうした銘柄を叩き売りセールの中で仕込み、経済が回復する切り返しのタイミングを待てばいいのです。
一度地獄の底まで下落したものは、反転した際にはジャンプアップの幅も驚くほど大きくなる。例えば、2003年に小泉政権下でメガバンク救済策が打ち出された際、その後の1年間でみずほフィナンシャルグループ株は8倍になりましたが、それと同様のことが起こると予想されます。
一方、小沢・橋下グループ政権となったらどうか。早期の金融緩和策への切り替えが考えられ、その結果として1ドル=100円ぐらいの円安にすぐに向かうと思われます。したがって、現在までの円高の影響で業績が悪化し、株価下落が続いて割安な水準に放置されている銘柄が一番にリバウンドする可能性が高く、狙い目になります。
例えば、日本の電機メーカーが軒並み赤字になったのは、薄型テレビの失敗もありますが、一番の要因は円高にやられたことです。それが1ドル=100円になったら、それだけで軒並み黒字になります。そうなれば株価も反転上昇が期待されます。いってみれば、ソニーが復活するようなイメージです。
また、小沢・橋下グループ政権となれば、恐慌で倒産企業が続出するような事態も避けられるので、業界トップだけでなく、中小企業までが買いの対象となり得ます。
とはいえ、現状では、政権の行方がどう転ぶかはわかりません。だからこそ、今はフットワークを鍛えることが肝心です。投資で儲けたければ、これから数か月間はマーケットの動きを注視し、いつでも動ける態勢をつくっておかないといけない。
政治が流動的な今の段階では、大勝負をかけることはまだしない方が得策だと思いますが、ウォーミングアップは不可欠。野球の投手に例えるなら、今の時点からブルペンに入って、いつ呼ばれてもマウンドに上がれる準備をしておくべきです。ウォーミングアップとして、少しずつ買い始めてみてもいいと思います。
※マネーポスト2012年夏号