運動能力は努力だけによるものなのか? フジテレビ系バラエティー番組『ホンマでっか!?TV』でもお馴染みの脳科学者・澤口俊之氏は一流のアスリートには脳に共通点があるという。以下は澤口氏の解説だ。
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ロンドン五輪も開催まであと1か月あまりとなり、観戦する側のスポーツ熱も高まってきています。そこで今回は、「アスリートの脳」について考えてみることにしましょう。
人種や競技の違いにかかわらず、「一流のアスリートにほぼ共通している脳の性質がある」ことが最近になってわかってきました。それは脳の「統合性」と「効率性」の高さです。
私たちヒトを含めた多細胞生物に共通する「原理」は「役割分担」です。その原理に基づき、身体には異なった役割を持つさまざまな臓器があります。そして臓器のひとつである脳は、さらにさまざまな役割を持った領域に分かれています。そしてそれぞれの領域がバラバラに働くと、脳全体がうまく機能しません。そのために、脳には「統合機能」があり、それを担う脳領域も用意されているのです。
脳の統合性は、数値化することができ、その数値を略してBISと呼びます。
そして、一流のアスリートは一般的なアスリートより、このBISの数値が高いことが知られています。BISとやや異なりますが、脳と筋肉の間で作る神経システムの統合性も一流のアスリートは高いのです。
さらに、一流のアスリートは、脳を効率的に使っていることも示されています。少ないエネルギーでより多くの仕事をする、という表現が妥当でしょう。つまり、一流のアスリートは、脳を無駄使いしないのです。
決勝戦などの大舞台に臨む際、並のアスリートは大きなプレッシャーを受けます。これはプレッシャーにかかわる脳領域が活発に活動してしまうからです。ところが一流アスリートの脳は、効率性が高いため、プレッシャーにかかわる脳領域の活動が抑えられ、統合性に優れるため他に必要な脳領域をうまく活動させることができるのです。
サッカー日本代表の本田圭佑選手(26才)らがここ一番というときに冷静にゴールを決められるのも、こうした脳の統合性と効率性のおかげだと考えられます。
※女性セブン2012年7月12日号