民主党と自民党、公明党は増税法案成立へ突き進み、「増税翼賛会」と化した。仙谷由人・民主党政調会長代行は、「消費税増税と原発再稼働が選挙の争点にならないように連立が一番いい」とはっきり語り、自民党や公明党の幹部たちは、「総選挙後の大連立」にまで言及している。これでは有権者に選択肢が与えられない。
この増税翼賛会の対抗勢力となる可能性があるのは、政界第3極しかない。渡辺喜美・みんなの党代表に、大阪維新の会、石原新党といった新たな政治勢力をどう結集するかを直撃した。
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――東京では、大阪維新の会に呼応して、石原慎太郎・東京都知事が新党に意欲を見せている。みんなの党、維新の会、石原新党という第3極結集はあるのか。
渡辺:石原新党が何を掲げるのかに注目したい。石原都知事の真骨頂は、青嵐会時代からの右寄りの保守政治家。一方、橋下(徹)さんは君が代斉唱などはあるが、必ずしも右寄りの政治家ではなく、非常に抑制の利いた思想・信条を持っているという印象だ。維新八策をレジメに行なわれた維新政治塾の外交・安保の講師陣の顔ぶれをみると思想傾向を読み取ることができるが、岡本行夫氏や北岡伸一氏というタカ派ではない人たちを選んでいる。
外交・安保政策で橋下さんと石原さんがどこまで一緒にやれるのかという疑問はある。そもそも維新の会は、『消費税は地方の財源にすべきだ』と今回の増税に反対の立場だが、石原さんがそんな意見を持っているとは聞いたことがない。
――石原新党の推進役の園田博之・たちあがれ日本幹事長は、大阪維新の会、みんなの党などの結集を呼びかけているといわれる。
渡辺:次の選挙の争点は、増税や原発再稼働の是非になる。われわれは増税の前にやることがある、再稼働の前にやらなければならないことがあると言ってきた。たちあがれ日本の政策は、再稼働は賛成でしょうし、増税も必要と自民党に近い。石原さんがそういう人たちのトップに立って新党をつくっても、自民党や民主党との政策対立軸は生まれないのではないか。
――石原新党との第3極結集はできない?
渡辺:石原さんが増税反対とか、原発再稼働反対という主張をしているとは寡聞にして知らない。そこが一致しないと。
――みんなの党と維新の会は電力自由化推進で、その点は石原都知事と一致している。
渡辺:われわれは電力自由化アジェンダで、『東京電力は破綻処理すべきである、発送電分離を前提に売れる資産は売り払うべきだ』と主張している。そこまで徹底した自由化論に踏み込むのであれば話は進むかもしれません。石原さんは新党を立ち上げるとおっしゃっているから、新党が出来てどんな政策をやるのか話を聞いてみないことには、今の段階では判断できない。
それに石原家はよく知られているように家族の絆のたいへん強いファミリー。子どもたちは父を尊敬しているし、親父さんは息子たちを心配している。石原さんの長男は自民党幹事長で、三男は自民党で落選中という事情を考えると、息子の邪魔になるような新党を本当に立ち上げるだろうかという疑問もある。自民党の補完勢力になるような意図を持った新党だとすれば、組めないのではないか。石原新党の政策や政治路線を見極める必要がある。
――しかし、維新の会は石原氏を政治塾の講師に招いているし、橋下氏ら幹部は自民党の安倍晋三・元首相らと会談している。維新の会と自民の接近があるのでは。
渡辺:たぶん、維新の方の考え方としては、橋下市長や松井大阪府知事ら維新の会の幹部が誰も国政に転じない場合、維新の会から国政に出るのは1年生議員ばかりになってしまう。誰か国会議員を束ねる維新にふさわしい国会のリーダーはいないかと探して石原さんや安倍さんと意見交換してきたのではないかと想像する。
その場合、当然、国会のリーダーは自民党籍のままでは困るわけです。しかし、石原さんはたちあがれ日本を母体に新党を考えておられるようだし、安倍さんは自民党を出る気はなさそうだ。
そのあたりの維新の会の戦略や体制が固まるのはこれからではないかと思うが、重要なのは、民主党や自民党は、中央集権・官僚主導という現在の統治機構の上に乗っている。みんなの党も維新の会も、統治機構を変えるべきだと言っているから、そうした既成政党と組んだ途端に終わってしまうわけです。だから我々は既成政党の補完勢力にはならない。
●聞き手/武冨薫(ジャーナリスト)
※SAPIO2012年7月18日号