東南アジア3か国ご訪問のため、6月25日、皇太子さまは羽田空港から旅立たれた。今回のご訪問、タイではプミポン国王と懇談されるほか、ラオスでは、メコン川や日本のODAで建設された武道センターなどを視察されるが、皇太子さまにとって、強い思いを胸に訪れる場所がある。それはカンボジアのある慰霊碑である。
1993年、内戦が続いていたカンボジアで、国連のボランティアスタッフとして活動していた中田厚仁さん(享年25)とPKOに派遣されていた警察官の高田晴行さん(享年33)が、武装集団の銃撃で、命を奪われた。
皇太子さまは今回、そのふたりが眠る慰霊碑に献花をされる。息子・厚仁さんの遺志を継ぎ、勤めていた会社を辞め、ボランティアとして世界中で活動をしてきた父・武仁さん(74才)はこう語る。
「皇太子さまが現地を訪れることによって、いまの若い人に、人々のために危険に立ち向かった息子がいたことを知ってもらうきっかけになればと思っています」
そんな武仁さんら遺族を、天皇皇后両陛下はこれまで、折に触れて励ましてこられた。
「事件直後、両陛下からはお供物を頂戴いたしました。以降、宮中晩餐会や園遊会などにも招待され、お声をかけていただきました。また、公式の場だけではなく、御所にも夫婦でお呼びいただき、食事をご一緒させていただいたこともあります」(前出・武仁さん)
そのとき、武仁さんは両陛下からこんな言葉をかけられたという。
「人を愛するということ、人を信じるということ、これは何より大切なことです。中田さんは、それを実践なさっているのですね」
息子を殺されたにもかかわらず、恨むことなく、世界平和のために尽力する武仁さんに送られた両陛下の賛辞だった。
※女性セブン2012年7月12日号