今年5月、“お金儲けの神様”の異名をとった邱永漢(きゅうえいかん)さんが88才で永眠した。
邱さんが商売を始めたのは、香港の知人宅に居候していた26~27才のときだった。物資欠乏中の日本に、郵便小包で商品を送るという商売。赤坂の土地が1坪1000円の時代に2年間で2000万円を稼ぎ出す。元の居候宅の隣家に住んでいた大企業の令嬢と結婚もした。
30才で小説家を目指し、日本に移住。翌年には小説『香港』を発表し、直木賞を受賞した。60才ごろには200万円を元手に1年間で5000万円儲けるなど、数々の伝説を生み、ときに失敗しては、そのことも執筆。ホテル、レストラン、不動産経営などを手がけ、経営コンサルタントとしても手腕を発揮した。
けっして難しいことではなく、お金が儲かる考え方を説いた邱さんは、雑誌や単行本、講演会にも引っ張りだこだった。
「お金はちょっとでも怖がらせると、たちまち逃げ出してしまいます。お金のほうで安心して懐にはいってこられるような状態を作っておくことが大事です」
「人生はお金が全てとばかりにガツガツしている人は、自然にものほしげな顔になってきます。端的にいえば卑しい顔、風格のない顔です。だから40過ぎたら自分の顔に責任持てというのは、金銭的な面からいっても本当なんです」
「お金も人と同じで、にぎやかで楽しいところが好きなんです。活気があってにぎやかな人にはいろんな情報がはいってくるから、もうけ話も集まってくる」
邱さんのマネー哲学はけっして古びることはないだろう。
※女性セブン2012年7月12日号