「君が代不起立」教師には厳罰をもって臨む橋下徹大阪市長だが、そもそも不起立教師を生む背景には「法律の壁」があるという。橋下市長を支える府市特別顧問の原英史氏が解説する。
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大阪市は公務員の政治活動について、条例による規制強化を検討しているが、「罰則は定めない」とする国の法律が壁として立ちはだかっている。法律で様々なことが一律に規定される分野は他にもある。
拙著『「規制」を変えれば電気も足りる』(小学館101新書)の第2章に書いたことだが、公立学校は、誰が上司なのかがよくわからない、不思議な組織構造になっている。
例えば市立小学校の場合、普通に考えれば、市長が“社長”、校長が“営業所長”と思うだろう。だが、実態は異なる。市長も校長も、先生たちの人事権を持っていない。人事権は、遠く離れた、都道府県教育委員会(大阪市のような大きな市では市教育委員会)が持っている。
形の上では上司でも、人事権がなければ、言うことを聞かない部下が出てくる。本当の上司が誰なのかよくわからない体制が、君が代斉唱時に座っている先生などを生み出す、問題の根源だった。
大阪の教育基本条例(正式には、府の場合、大阪府立学校条例)では、ここに手を打ち、校長に実質的な人事権を与えることにした。
だが、やはり法律の壁がある。教育委員会制度や人事権の所在などは、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」という法律で決まっている。条例で大阪だけ別の仕組みにしてしまおうとしても、法律違反になってしまうのだ。
そこで大阪の条例でやったのは、あくまで「実質的な人事権」ということ。形式的な人事権は法律通り教育委員会が持つ。ただ、校長が「この先生は異動させてほしい」などの意見を教育委員会に申し出た場合、委員会がこれを「尊重しなければならない」と条例で定めたのだ(条例20条)。
※SAPIO2012年7月18日号