国際謀略から闇献金、果ては家庭問題まで、なぜ小沢一郎・元民主党代表だけがこれほどまでに狙われるのか。ジャーナリスト、鳥越俊太郎氏と、東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏が対談。最近報道された小沢氏の夫人が知人に出したとされる小沢氏への離縁状の背景などを分析する。
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鳥越:「夫人の手紙」はどう見ますか? 私はあまりにも“うまくできてる”印象と、消費増税の採決直前という報じられたタイミングから、これは誰かが仕組んだなと感じました。
長谷川:心情の記述などはよく書けていて、これは本物かなと思わせる内容ではありましたね。
鳥越:その“小沢ならあるだろう”という多くの人の気持ちに合わせて作られたストーリーであるところが怪しい。少なくとも、あのような私的な内容を、真偽の確認もないまま新聞までが報じることは疑問です。やはり小沢氏は必要以上に恐れられているような気がしてなりません。
長谷川:簡単にいえば「記者に嫌われている」ということでしょう。霞が関は本当に恐れているかもしれないが、例えばマスコミの人間はもっと単純に、ネタをくれない、仲の悪い記者はシカトする、気配りをしてくれない、というような理由で小沢氏を嫌っているんじゃないですか。
小沢氏の側近は議員も記者も切られてしまうと、切られた理由もわからず、電話にも出てもらえなくなるんだそうですね。「20回もメシを食ったが、1回しかおごってくれない。あいつはケチだ」といった高名な評論家もいます(笑い)。
それに霞が関が嫌う人間をよく書く記者がいないことも事実。新大臣の人物評などは、実は官僚がくれた話とか評価をそのまま書く。逆に官僚が「あいつは駄目だ」といえば、そのまま悪口を書いたりする。
鳥越:それでも生き残るところも小沢氏の稀有な点。今回も小沢支持票ではないにしろ、57人もの民主党議員が造反に同調した。逆説的だが、特捜部に徹底的に狙われ、マスコミに叩かれ続けたことで、それでも潰されない小沢ってスゴイなという人もいる。
長谷川:そこに殉教者のような雰囲気を感じる国民もいるでしょうね。
なぜ小沢氏が政治にこだわるか? それはもちろん、権力への欲望でしょう。それは別に否定も批判もしませんけど、あれくらいの「重要人物」はもっと国民の前で語ってもらわないといけないと思います。
鳥越:小沢氏はこれまでも総理大臣になろうと思えばなれた。それをせず、しかしここまで叩かれても政治に身を置き続けるのは、やはり日本に足りないもの、政治家として成し遂げたいものが残っているからではないか。その志があることは、私は信じたい。
※週刊ポスト2012年7月13日号