消費増税法案は、衆議院で民主、自民、公明3党の多数で可決されたが、民主党から反対57人、棄権・欠席16人の73人という大量造反者が出た。先行離党組の新党きづなや新党大地・真民主、無所属のままの議員を加えると、前回総選挙で当選した民主党衆院議員のうち約3分の1の90人が造反側に回り、大分裂を起こした。
大量造反の瞬間、野田首相の顔にはみるみる黒い隈取りが浮かび上がり、岡田克也・副総理も表情を強ばらせて鬼の形相を見せた。
造反者が増えたのには理由がある。民主党議員たちは週末、地元に戻って支持者の意見を聞き、「党の方針に従うか、有権者の増税反対の声を尊重するか」のギリギリの決断を迫られた。野田首相は採決前日の代議士会で「心から、心から、心から」と“お涙頂戴”の賛成を訴え、大メディアは、「総理がこれほど頭を下げているのに与党議員が反対するのはおかしい」という論調で反対派を封じ込めようとした。
ところが、首相の言葉とは裏腹に官邸は土壇場まで姑息な切り崩し工作を進め、それがかえって真剣に悩んでいた中間派の怒りを買った。
採決直前、福田衣里子氏、宮崎岳志氏、村井宗明氏ら中間派の1回生議員7人が記者会見で造反を表明した。その1人が周辺に明かした本音はこうだ。
「官邸や執行部側から、『賛成するなら政務官に起用する』とポストを提示された。私たち1回生は総理以上にこの採決に政治生命が懸かっていた。口では『心から』といいながら、真剣に悩んでいる私たちがポストで転ぶだろうなんて思われたことに怒りが込み上げた。バカにするな、と造反を決意したんです」
※週刊ポスト2012年7月13日号