フェイスブックの普及により、私たちの生活はどう変わるのか。かつて外資系証券会社で莫大な利益を上げた“伝説のトレーダー”赤城盾氏が、フェイスブック文化が日本にもたらす影響を分析する。
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フェイスブックは、昨年、デモの組織化などに活用されて、「アラブの春」と呼ばれた民主化運動を強力にサポートした。コミュニケーションの新技術が、政治や文化の地域的な特性を破壊して、世界を均質化するパワーを発揮し始めたのである。
もしフェイスブックがメールや検索を駆逐して人類のコミュニケーションの根幹をなすようになったら、われわれ日本人も否応なく巻き込まれる。
フェイスブックの支配する世界では、誰が自分の「友達」であるかを隠すこともできない。裏表なく公明正大に、何事につけ旗幟を鮮明にすることが求められよう。その場の空気を読みながら本音と建前を使い分け、イソップ童話に出てくる蝙蝠のように世間を遊泳する「日本的な」生き方は許されなくなる。
息が詰まりそうな話であるが、日本経済にとってはよいことかもしれない。携帯がガラパゴス化したり、電子書籍化が遅れたり、このところの日本経済の不調の根底には、自国文化に対する妙なこだわりが見て取れる。
思い起こせば、それまでの自国の諸制度をそっくり捨てて、西欧の猿真似に徹した明治維新こそが近代日本の経済的な飛躍の出発点であった。やがて愚かな国粋主義に取り憑かれて壊滅的な敗戦を喫するも、憲法をアメリカ風に書き換えて見事な復興を果たしたのである。
もしかしたらフェイスブックが一神教の厳しい倫理をもたらして、わが国は明治以来の欧米化の総仕上げを成し遂げるのかもしれない。草食化したといわれる日本の若者は、能くその変化に馴染むであろう。
【プロフィール】
あかぎ・じゅん:1980年代後半、米証券会社ソロモン・ブラザーズに入社し、同社の高収益部門の一員として活躍し、巨額の報酬を得た後に退社。
※マネーポスト2012年夏号