石原慎太郎都知事の「尖閣購入」発言に、中国や台湾が過剰反応している。都知事の国会参考人質疑の前後から、多数の中国・台湾漁船が、尖閣上陸に向けて続々と動き出している。
それに先立つ6月上旬、民間団体「頑張れ日本! 全国行動委員会」が主催する尖閣周辺の集団漁業活動が敢行された。その視察のため、石垣市の漁業関係者や国会議員らが参加する中、「購入」の主体である東京都の議会からただ一人、野田数(かずさ)都議(無所属)が同行した。都議の目から見た国境の島の現実をレポートする。
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晩中、小さな船に揺られ、目の前に現われた島は、朝陽に輝いていた。大海原にポツンと、しかし厳然とそこにある島の岩肌には日の丸が描かれている。まさに「日本の領土」である。
近づくと、以前見た写真よりも、緑が少ないように思えた。岩が露出している。あとで同行した石垣市の担当者に聞くと、繁殖したノヤギが緑を食い荒らしているとのことである。あらためて東京都として島を購入し、一刻も早く適切な管理を行なわなければならないと痛感した。
国会議員6人を含む約120人が、14隻の船に分乗しての視察だった。私と同じ船にも3人の民主党の国会議員が乗っていた。
憤りを感じたのは、国会議員が6人も同行しているのに、なぜ「日本の領土」に上陸できないのかということだ。尖閣諸島に国会議員が上陸したのは、1997年の西村眞悟元代議士の視察が、最初で最後である。今年1月、2人の国会議員が15年ぶりに現地を訪れたが、それも上陸はせず海上から見ただけだった。国土を守ろうという姿勢から言えば、“後退”している。これでは、中国につけいる隙を与えているようなものだ。
彼らには、国政調査権がある。しかも、「国有化」まで検討するという。そこまで言うのに上陸できないのはおかしい──そう参加した国会議員の一人に言うと、「そろそろ上陸禁止は取り消すべきだと、個人的には思います」と答えるだけだった。
要するに、彼らは国を守るという覚悟があって尖閣まで来たのではないのではないか。腹立たしかったが、「国に任せていては何も進まない」ということを再認識した。
同じことは、地元の方たちも感じているようだ。海に出る前に、石垣市役所に訪問した際、市の職員や地元有力者と話すことができた。その中の一人はこう私に囁いた。
「もう、国には期待できません。石原さんに感謝したいと思います。東京都が、最後の頼みの綱です」
石原都知事は、着々と準備を進めている。募金も6月19日時点で、12億円が集まっている。残念なのは、肝心の都議会の腰が極めて重いことだ。
都議会自民党を含め、主要会派は石原都知事の購入計画に、この期に及んで明確に賛成を表明していない。私は5月に自民党会派を離脱して無所属となったが、それは尖閣問題をめぐって知事を支持する自由な発言が許されず、所属する委員会の配置転換などの圧力がかかったからだ。
都議会自民党は、国と同じように、中国の顔色を窺っているのかと疑ってしまう。石原都知事が尖閣購入を表明して2か月以上経つが、この間の自民党などの主要政党の不作為は、後々大きな代償とならないか。
※SAPIO2012年7月18日号