次長課長・河本準一(37才)とキングコング・梶原雄太(31才)の報道を受けて、俄然注目を浴びた生活保護問題。そもそも、生活保護制度は、2008年ごろからきしみ始めていた。ある生活保護窓口の職員はこう話す。
「リーマンショック後の年越し派遣村(職や家を失った派遣社員たちに、無償で食事を提供したテント村)が、大きなきっかけでした。それ以前は、“資産がない”“収入がない”などの要件だけでなく、申請者が“働けそうかどうか”も判断基準のひとつだった。しかし、派遣村がメディアで取り上げられると、上(厚労省)からの通達で、一見働けそうな若者でも“いまは仕事がないから仕方がない”と、積極的に生活保護申請を認める方針に。さらに、派遣村のかたがたが集団で生活保護申請をする報道に触発されて、『自分も…』という若者が増えました」
実際、全国の生活保護受給者数は右肩上がりに増える一方だ。月1万人ペースで増加し、河本問題が起こる直前の今年3月時点で210万人を突破。これは長野県の人口(215万人)に匹敵する規模だ。
そして、この問題は受給者増加の歯止めになるどころか拍車をかけることになり、そのペースは加速する勢いだと、現場の職員は実感する。
こうして増え続ける申請に対し、たとえモラルに疑問を感じても、現場は口を挟みにくい雰囲気があるという。生活保護受給者への指導や助言を行っている大阪市の女性ケースワーカーが明かす。
「ちょっと申請を厳しくしたり、詳しく調査しようとすると、福祉に熱心な政党の市議会議員やNPOからクレームがきたり、いわゆる人権派弁護士といわれる人が出てきたりする。だから、現場の担当者はできるだけ問題が起きないようにするのが実情。受理を断った相手から、“覚えとけよ”とか“お前らも家族いるやろ”と脅されたこともある。正直、怖いですよ」
※女性セブン2012年7月19日号