東日本大震災から1年余りが経つ。震災当時、避難所生活を余議なくされていた被災者たちの健康を支えたのは、ラジオ体操だったという。
被災地支援のために、避難所を訪問していたNPO法人全国ラジオ体操連盟理事の長野信一氏はこういう。
「避難所での生活は、体を動かす機会が少ないため、『エコノミー症候群』と同じように血の流れが悪くなり、血栓ができやすい状態になってしまっていたんです。この状態が悪化すると、心筋梗塞や脳卒中につながることもあり、命にかかわります。
ラジオ体操で体を動かすことで、その解消に役立つことができたと思います」
こうして見直されたラジオ体操の果たす大きな役割。さらに、今年4月に発売されたスポーツドクターの解説付きラジオ体操本『実はスゴイ! 大人のラジオ体操』(講談社)は40万部を超える大ヒットで、“究極のエクササイズ”と呼ばれ、ブームに拍車をかけた。
誰もが幼いころ、夏休みに出席カードを片手に通ったラジオ体操だが、意外と知られていないことも多い。そこで、思わず“へぇ~、そうなんだ”というラジオ体操にまつわる話を4つ紹介します。
【1】第二は職場向け
1951年(昭和26年)、現在のラジオ体操第一が生まれ、翌年には、第二が完成した。第二は、第一よりも少しテンポが速く両足のジャンプから始まるなど、動作もダイナミックなのが特徴だ。「全身の筋肉や関節をしっかり動かすので、職場向けにつくられました」(前出・長野氏)
【2】幻の第三体操
現存するのは第二までだが、かつて、第三が存在したことがある。「終戦直後には、第三体操があったんです。ただ、別名“舞踏体操”といわれるほど、高度な動きだったために、わずか1年ほどでなくなりました」(『素晴らしきラジオ体操』の著者・高橋秀実氏)
【3】夏休みにラジオ体操を始めたのは警察官
そもそも夏休みにみんな集まって体操を始めたのは、東京・万世橋署の警察官だった。都会で海水浴もできない子供たちを見て、街中でも楽しく、しかも心身を引き締めるためにもという意味合いで120人ほどの親子を集めて、空き地でラジオ体操を行ったのが1930年(昭和5年)。これが、やがて全国に広まり、夏の風物詩となった。
【4】方言バージョンがある
ラジオ体操は、標準語のきれいな語り口で、動作を説明していくアナウンス付きだが、なんと方言バージョンもあるという。宮城県石巻市では、石巻弁バージョンのラジオ体操をCD化した。“腕ばめーがら上さあげで、おっぎく背伸びこすべし”とおなじみのメロディーにのせて、聞こえる方言は、なんとも情緒たっぷり。ちなみに、NHKの公式サイトからは着うたとしてスペイン語やロシア語バージョンもダウンロードできる。
※女性セブン2012年7月19日号