多数の死傷者を出す暴走車事故が続発している。事故を引き起こした加害運転手は無免許、飲酒、覚せい剤…さらには運転手自身が亡くなってしまうケースもある。そんな運転手には保険が適用されない場合も…。つまり、凄惨な事故で突然、家族の命を奪われながら、充分な補償も受けられず、遺族が「二度泣かされる」厳しい現実がある。
一般に、交通事故の被害にあった場合、被害者は損害賠償金を受け取ることになる。損害賠償金は通常、保険会社を通じて支払われるが、“保険”には車を所有する人が必ずはいらなければいけない「自賠責保険」と、自由に選択できる「任意保険」があり、自賠責保険で補償しきれない部分を任意保険でカバーするシステムだ。
被害者は、加害者側の保険会社と示談交渉、もしくは民事訴訟を起こしたうえで損害賠償を請求することになる。9年前、夫(当時54才)を交通事故で亡くした妻はこう話す。
「相手の保険会社とのやりとりのとき、賠償請求金額を書く欄があったのですが、保険会社の人に、『そこは書かなくてもけっこうです。私どもが妥当な金額を責任をもって計上します』といわれ、信用しました。提示された金額は約2000万円。相手の信号無視でしたし、あまりに納得できずに弁護士に相談したら、結局約3倍の金額になりました。保険会社には命を安く見積もられてしまったような気がして…本当に落ち込みました」
高山法律事務所の高山俊吉弁護士がいう。
「補償の問題では、保険会社のいいなりになってはいけません。いいなりになっていると、被害者が請求した金額がどんどん削られ、保険金がまったく支払われないことや、実情に合わない低い水準の額を示してくることが非常に多いのです。被害者の10人中9人は保険会社のいいなりになっている状況です。弁護士に相談し、交渉すると2~3倍、極端にいうと10倍の金額が支払われることもあります」
全国交通事故遺族の会副会長の戸川孝仁さんも、保険会社には補償金を抑えようとする傾向があると指摘する。
「かつて保険会社は“払い渋り”といって、露骨に支払いを少なくしようとした。いまだに示談より調停、調停より裁判のほうが補償金が高い傾向にある。これは明らかにおかしいことです」
※女性セブン2012年7月19日号