睡眠の必要性はわかっていても、物理的に十分な睡眠をとることができない、あるいは、睡眠障害でなかなか眠ることができないなど、睡眠に関する悩みは多い。1999年、睡眠不足が続くと、耐糖能が障害されるという研究結果がシカゴ大学から発表された。
健康な若者11人を対象に、1日の睡眠時間4時間で6日間過ごした後の結果を集計すると、11人とも耐糖能障害(ブドウ糖を処理する能力が落ちた状態)で、インスリンの効きが悪くなる状態(インスリン抵抗性)になった。日本大学附属板橋病院睡眠センター長の赤柴恒人教授に話を聞いた。
「耐糖能障害というのは、糖尿病の前段階、あるいは予備軍ともいうべき状態です。また睡眠不足による過度の緊張から高血圧になる可能性もあり、これらはメタボリックシンドロームの初期で、続くとメタボが促進される可能性があります。そして、実験から睡眠不足は肥満を助長させることもわかってきました」
睡眠不足になると、満腹感を感じるレプチンというホルモンが低下し、食欲を刺激するグレリンというホルモンが増加する。ホルモンの分泌が異常になるために、満腹感が得られず食べ過ぎてしまい、肥満に繋がる。睡眠不足が過食を助長するということが指摘されたのだ。
実験では、十分な睡眠をとると、ホルモンの分泌は正常に戻り、さらに耐糖能障害も改善されることもわかっている。
(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2012年7月13日号