1989年の天安門事件当時の学生民主化運動のリーダーで、服役を経て米国に亡命した民主活動家の王丹氏(43)は次期中国首相候補の李克強・第一副首相について、「彼は改革に理解があると思われているが、過去に党の最高指導ポストに就いていた指導者でさえ、改革を実現できなかった。ましてや体制内の指導者が改革的かどうかで希望を持つことはがっかりする結果になるだろう」と述べて、李氏を小物扱いした。
これは訪日した王丹氏が7月5日、東京都内で開かれた自由報道協会で記者会見した際、「次期首相候補の李克強・第一副首相は王丹さんと同じ北京大学出身だが、彼が改革を推進するかどうかについて期待するか」との質問について答えたもの。
王丹氏は「たしかに、彼は私と同じ北京大出身だが、天安門事件を弾圧した当時の北京市長だった陳希同も同じ北京大学出身だった」と述べた。そのうえで、事件当時、民主化を成し遂げようとした改革派の指導者として、趙紫陽・元党総書記らの名前を出して、「現在の指導者としても、温家宝首相の方が改革に理解があると思われている。彼の方が李克強よりも実力がある」と指摘した。
王丹氏は今後の中国民主化の原動力として、インターネットに強い期待を示し、「中国のネット人口は多く、抑えようがない。私は昨日、東京都内で会った友人と写真を撮ったが、彼がすぐに(中国版のツイッターである)『微博(ウェイボー)』に写真を載せた。それは中国当局の手により、30分で削除されたが、少なくとも30分は見られたわけで、完全に管理することはできない」とのエピソードを紹介。
ネット規制と国民運動の拡大可能性について、「各地の民衆暴動などの事件もネットを通じて広まっている。中国ではネット規制が厳しいと思われているが、実際にはそうでもない」との認識を示した。
さらに、「実は中国の民主化にとって、ネットが規制されていることがプラスになる。若い人たちはIT関連で生計を立てている人が多く、ネット規制をすれば反政府陣営に追い込むことになるからだ」述べたうえで、「北京や上海でデモや集団的な抗議を起こすことは重要だが、いまのところネット以外にそれが可能なルートは考えにくい」と強調した。
王氏は中国共産党や政府の幹部が海外に資産を移したり、子弟や親族が海外に移住するなどの傾向が強まっていることについて、「高級幹部たちは政治の動静をよく知っているので、近いうちになにか(政治的な変動が)あると思っているのではないか」と述べて、秋の共産党大会を控えて、大きく政治が動く可能性があるとの見方を示した。
王丹氏は現在、台湾に在住しており、清華大の客員助理教授を務めている。