CFD(差金決済取引)とFX(外国為替証拠金取引)は「売り」からも取引を始められるため、相場が下落しそうなときも利益を得るチャンスを逃さない。欧州債務危機、米国景気の低迷……。激動する世界経済の波にどう乗っていけばいいのだろうか。IGマーケッツ証券の為替アナリスト、石川順一氏に今後の株式や為替相場の見通しについて聞いた。
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直近ではギリシャの政局混乱がクローズアップされ、市場はギリシャがユーロ圏から離脱する可能性も意識し始めています。それに伴いユーロ保有リスクも高まっています。
今後、値動きが激しくなるという視点から、ユーロ/円に注目したいと考えています。ギリシャで新政権が発足しましたが、緊縮政策がうまくいかない場合、同国のユーロ圏の離脱やデフォルトを意識し、さらに下落していく可能性が高まると思われるからです。
リスク通貨として市場でとらえられているユーロが下落すれば、同じリスク資産の性質を持つ原油といった商品市場にも同時に売り圧力が強まりやすい環境になると考えています。
実際、5月上旬のユーロ下落局面では、NY原油(WTI)が100米ドル台から90米ドル台まで10米ドル以上も下落しました。また、原油価格をはじめ資源価格が下落するときは、豪ドル/円などの資源国通貨も連動して下がっていく傾向があります。逆にこうしたリスク回避の局面になると、米ドルや円が買われやすい状況になってきます。
ここまではリスクオフのシナリオですが、欧州危機が収束してきた場合は、逆に市場でリスクオンのムードが強まり、投資家の資金が株式市場に流入し、ユーロや豪ドルといったリスク通貨が買われやすい環境となるのではないでしょうか。
さて、今年11月には米大統領選が控えています。大統領選の年は為替市場が基本的に動きづらい年とも言われており、ある程度米ドルが下がってもどこかで反転する可能性があります。また、今後は大統領選を意識して現政権が景気刺激策などを積極的に打ち出してきたならば、米国の株式や米ドル/円で底堅い展開となる可能性が出てくると考えます。
※マネーポスト2012年夏号