料理教室の生徒を多数かかえ、テレビや雑誌に引っ張りだこの“登紀子ばぁば”こと、料理研究家の鈴木登紀子さん(88才)。そんな鈴木さんが、料理の“段取り”の重要性について教えてくれた。
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昔、わが家には住み込みの助手さんがおりました。そのころは、朝食にベイクドポテトを添えることに凝っていたのですが、これを作るのは助手さんたちの役目でした。
じゃがいもを洗い、十文字に切り込みを入れて丸ごとラップに包んで電子レンジで6~7分加熱し、あとはバターをのせるだけ。シンプルですが、朝食にはぴったりの一品です。さて、これを彼女たちは朝起きてから、やおらベランダに置いてあるじゃがいもを取りに行き、たわしで洗いはじめます。
その姿に、意地悪ばぁばは思います。前の晩に洗う過程だけでもすませておいたらどうかしら…。それだけでも、ずいぶんと時間を得したような気分になりませんか。また、その手で、ざるに上げておけば水もよく切れます。ラップに包んでおくところまでやっておけたら、さらに上等。忙しい朝、得したその10分がもつ意味は大きいはずです。
あるいは、あらかじめ外出することが決まっている日は、その前に段どりを考えて、下ごしらえや下味をつけておき、帰宅したら、火を通したり盛りつけをすればよいだけにしておく。炊き込みご飯などにすれば、あとは汁ものと常備菜で立派に献立が整いますわね。
頭の中で手順の先を読みつつ、数字にはできないプロセスを計算できることが、「段どりがよい」ということになるのでしょう。段どりよく作られたお料理は、しゃきっと味もよく仕上がるものです。
ばぁばは、段どりを考えることができる間は、体も心もまだ大丈夫、そう考えることにしております。
※女性セブン2012年7月19日号