ロンドン五輪で金メダルが期待される絶対的エースにしては、意外なほど弱気な発言だった。
「本調子のプレーができていなかったので、正直不安でした。年齢的にも最後の五輪になるかもしれないですし、集大成として結果にこだわりたい。本当は金メダルといいたいですけど、そんな簡単じゃないことも分かっている」
「なでしこJAPAN」の代表メンバーに選ばれた澤穂希(33)は、記者会見でそう率直な心情を吐露した。
「足の故障やめまいに苦しんだ澤は、復帰後も5割程度しか回復していない。本人も上げ底された代表選出であることを自覚しています。澤が本番でも不調だったとき、それでも彼女と心中するか、次世代も見据えてバッサリと交代させるか、その決断がメダルのカギを握ります」(サッカージャーナリスト)
澤の選出には、日本サッカー協会(JFA)の強い意向が働いたともいわれる。その背景には、協会が水面下で進めている女子サッカーのワールドカップ日本招致計画がある。
「2023年の日本開催を目指して、招致委員会の立ち上げに動いています。協会は2022年の男子ワールドカップ招致に失敗しており、もう失敗が許されない。MVPとして世界的にも知名度がある澤は、広告塔として必要不可欠なんです」(協会関係者)
ワールドカップ優勝以来、川澄奈穂美(26)や宮間あや(27)らが一躍人気者となったなでしこJAPANだが、澤が象徴的存在であることに変わりはない。事実、彼女が不調で出場機会も限られる今年のなでしこリーグは、ワールドカップ効果があった前年の反動もあり、観客動員数がやや落ち込んでいる。
「澤は『最後の五輪』をほのめかしていますが、本音をいうと協会としては招致が決まる2017年まで、何とか現役でいてもらいたい。フル出場は無理でも、“キング”カズのように続けてもらうことに意義がある」(同前)
招致決定の翌年には澤も40歳。“クイーン”サワが普通の女の子に戻れる日は、まだまだ遠いようだ。
※週刊ポスト2012年7月20・27日号