永田町も霞が関も大メディアも、「やっと小沢一郎を政権から追い出せた」と万歳三唱している。 目論見通りに民主党を分裂に追い込んだ自民党は、「民主党はまさに学級崩壊」(茂木敏充・政調会長)と大はしゃぎ。
民主党で一番喜んでいるのは元祖・言うだけ番長の前原誠司・政調会長だろう。小沢新党の動きを、
「反増税、反原発だけで選挙に勝てるというのであれば国民をバカにしている」
と批判したが、八ッ場ダム建設中止をはじめ、言葉だけで大臣にまでなって実行しなかったのは誰か。党分裂で野田政権は瀕死の状態に追い込まれた。「もうすぐ代表の座が転がり込んでくる」と思い込んで、浮かれまくっている。
新聞・テレビも、小沢新党の参加者が2人減った、また1人減ったと連日大きく取り上げ、〈小沢新党、内閣不信任案は提出できず〉(7月2日付朝日)とまるで鬼の首を取ったように報じる。小沢氏とともに離党したのは衆院37人、参院12人の49人。後に衆院1人が加わったが、不信任案提出には衆院51人以上が必要だから足りないという論理だ。こちらは足し算ができないらしい。亀井静香・代議士が算数を教えてくれた。
「増税法案に反対票を投じた新党きづな(9人)や新党大地・真民主(3人)、田中康夫氏ら志を共有する無所属議員7人を合わせると55人になる。内閣不信任案提出に必要な数を軽く上回る。官邸は衆院で40人近い小沢新党が怖くて仕方がない。これが本音だ」
政治ジャーナリスト・野上忠興氏は、むしろ造反組の半数が民主党内に残ったことで政権運営が一層困難になったと指摘する。
「官邸や党執行部は造反組を切り崩して離党者を最小限にとどめたことで大勝利のつもりだ。新聞もそう報じるが、それは戦略上の失敗です。野田首相が党内を増税路線で固めて自公との大連立に進むなら、造反組全員に離党を勧告すべきでした。政策的にもわかりやすいし、民主党が過半数を割っても自公を合わせれば圧倒的な与党になれる。だが、30数人の造反組を無理に党内に抱え込んだことで、再分裂の火種が残った」
※週刊ポスト2012年7月20・27日号