国民はまだ大増税の本当の痛みを実感していない。野田政権は消費税率を2014年4月から8%、2015年10月に10%に引き上げようとしている。
そのときにどんな地獄が待ち受けているのか。大和総研が6月22日に発表した『社会保障・税一体改革による家計への影響試算』には、恐ろしいデータが示されている。
試算は消費税増税だけではなく、これから実施される復興増税や地球温暖化対策税の創設、子ども手当廃止(支給額カット)、年金保険料値上げなど数々の国民負担増によって、家計の可処分所得がいくら減るかを世帯類型別に分析したものである。
「40歳以上の夫婦で妻が専業主婦、子ども2人が小学生」の家族構成の場合、増税実施前の2011年と大増税が完全に実施される2016年を比べると、年収300万円の世帯は可処分所得が約25万円減り、年収500万円の世帯なら約33万円、年収800万円世帯は約43万円、年収1000万円世帯になると約62万円もの大幅減になる。
政府がやろうとしている大増税は、いわば国民の給料を6~8%カットするのと同じことなのである。可処分所得がそれだけ減れば、当然、消費増税との相乗効果で消費は大きく落ち込み、景気が一層悪化して給料はさらに下がるという悪循環に陥る。日本の未来は真っ暗だ。
野田首相は「子孫にツケを回すな」「社会保障のためには増税が必要」といい、国民は「財政危機だから増税は仕方がない」と洗脳されかけているが、大増税を決めた与党3党が何をやったかといえば、野田内閣は早速、シロアリも乗らない整備新幹線の建設に着手し、税金3兆400億円を注ぎ込む。それで九州では、福岡と佐賀の所要時間が「2分」短くなるらしい。
さらに自民党は「200兆円公共事業」をぶち上げ、公明党は、お得意の「低所得者給付金」を勝ち取って選挙対策は万全だ。これが増税の真相である。
※週刊ポスト2012年7月20・27日号