今、欧州を席捲しているのは、ヘッジファンドなどの国際金融資本だ。彼らはギリシャ危機を利用して空売りで大儲けし、さらに、「機能不全は当分続くので、欧州圏の債権は買うべきではない」と“ドイツ売り”に回っている。
世界のこうした動きに日本は無関係ではなく、すでに国際金融資本は日本の金融市場でも暴れ回っている。
東日本大震災直後の2011年3月15日、日本の株式市場の先物で一時1600円安という大暴落が起きた。この商いで、ニューエッジ・ジャパン証券という聞き慣れない会社が全体の3割近い約5000億円も売り叩いていた。経済アナリストの朝倉慶氏が話す。
「ニューエッジは、コンピュータによるロボット・トレーディングを戦略とするフランス系の証券会社です。売買規模から見て数兆円の資産を運用しているはずで、おそらくは大物ヘッジファンドの注文を仲介しているか、自らが大きく自己売買をしていると考えられます」
今、欧州を席巻している国際金融資本が最後のターゲットとして狙っているのは日本だ、と多くの専門家が指摘している。日本経済に好材料が何もないのに日本国債が飛ぶように売れているのは、世界の投機マネーの緊急避難先になっているからに過ぎない。今の状況は“国債バブル”と呼んでも差し支えない。しかし、バブルはいつか必ず崩壊する。
今年1月29日付日本経済新聞で、ヘイマン・キャピタル・マネジメントの創業者カイル・バスが、日本国債のバブルは「18か月以内に崩壊する」と予言し、「日本の長期金利の上昇と為替の円安に備えたポジションをすでに取っている」と日本売りを公言した。
“国債バブル”崩壊の危険性が指摘されると、常に「95%が日本国内(ゆうちょ銀行を筆頭とする日本の金融機関)で消化されている日本国債が売られることはない」と反論される。だが、果たして本当にそうなのか。
「今年2月2日付朝日新聞が、三菱東京UFJが国債暴落に備えて危機管理計画を作ったと報じた。2016年頃に日本の経常収支が赤字になり、長期国債が格下げされて金利が急騰したら、短期国債に買い替えるとしている。そうなったら、当の日本人が一斉に売りに走ることは十分に考えられるのです」(国際金融アナリスト・堀川直人氏)
日本が1000兆円という世界最大の借金を抱え、財政破綻寸前にあることは紛れもない事実だ。破綻で儲ける旨味を知ってしまったモンスターたちが、次に日本を狙っている可能性は極めて高い。
※SAPIO2012年7月18日号