毎日新聞は小沢一郎・元民主党代表が民主党に離党届を提出した7月2日の夕刊1面で、小沢氏が宗教団体「ワールドメイト」の関連団体に顧問として就任し、毎月200万円の顧問料を得ながらその事実を隠していた、との批判記事を大々的に報じた。
だが、記事をよく読むと顧問料の金額は雑所得として報告書に計上されており、問題は顧問就任の事実を2010年度分の報告書に記載していなかった一点のみ。小沢事務所がいうとおり「事務的なミス」で、訂正すれば済む話に過ぎない。
ところが毎日は、政治学者のコメントで「顧問の対価としては金額が極めて不自然」「罰則やペナルティーがないため、記載漏れが繰り返される」などと、問題を無理やり大きくしようとする創意工夫を見せた。
ワールドメイトとその関連団体は、以前から亀井静香氏や鈴木宗男氏ら複数の政治家に献金を行なってきた。いまさら新聞が細かな記載ミスを問題視するのは、それが「小沢一郎と宗教団体」の関係であるからに他ならない。だが、政治と宗教との関係自体を問題視するなら、公明党と創価学会の関係はどうなるのか。
問題はまだある。ワールドメイトの一件が報じられた翌日、民主党の藤田幸久・財務副大臣が不動産所得と雑所得で約200万円もの記載漏れを訂正した。こちらは所得自体を隠していたのだから、小沢氏の件よりよほど問題が大きいはずだが、新聞はベタ記事程度しか報じなかった。「反増税」の小沢氏と、「財務副大臣」だと、こうも扱いが違うらしい。
「人物破壊」が権力者の暴走として起きる以上、問題は小沢氏だけでは済まない。小沢新党との連携を口にするだけで敵と見なされることになる。たとえば消費増税反対派を側面支援した河村たかし・名古屋市長率いる減税日本の名古屋市議は、「政務調査費でコミック誌を買った」という“政治とカネ問題”で新聞各紙に厳しく批判された。先の藤田副大臣の問題と同時期だったが、どちらが重大か考えるまでもない。
※週刊ポスト2012年7月20・27日号