消費税の引き上げについて新聞各紙では増税賛成派から「子孫に借金を残すな」という論調がでてきた。こうしたロジックの欺瞞を東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏が解説する。
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消費税引き上げ法案が衆院を通過し、いよいよ増税が本当の話になりそうだ。マスコミも増税賛成派と反対派にくっきり分かれている。ちなみに東京新聞は反対派である。
増税応援団がよく持ち出す話の一つに「子孫に借金を残すな」論がある。最近も毎日新聞が社説で「子や孫に借金回さない」という見出しを掲げて、次のように主張した。
「民主党が政権を取って3年、以前にも増して借金は増え続けている。(中略)このままでは膨大な借金を子どもたちの世代に回すことになる。ただでさえ少子化で次世代の人口は減り続け、さらに若年者を労働市場からも締め出していたのでは、社会は破綻する」(7月2日付)
これは一見、もっともらしい。この際、根本に立ち返って考えてみよう。
そもそも子供に国の借金を残すのは悪いことか。人生90年として、いまの世代が将来の子供世代に国の借金を残さないとしたら、これから最長90年で国の借金をぜんぶ返済しなければならない。これは好ましいか。
そんなことを本気で実現しようとすれば、とんでもない大増税と歳出カットが必要になる。あっという間に恐慌状態になって、子育てどころか日々の暮らしも困るようになるだろう。まったく、ばかばかしい。
前にも書いたが、人生はだいたい90年で終わるが国は永遠に続く。サラリーマンは必ず住宅ローンを返済しなければならないが、死なない国家は借金をぜんぶ返済する必要はない。言い換えれば、いつの時点でも子供はみんな国の借金を背負っている。これが普通の状態である。「子供に借金」論は、有限の個人と無限の国を同列に扱った目くらましの議論なのだ。
※週刊ポスト2012年7月20・27日号