急激な為替変動に対して各国の中央銀行が行なう市場介入が効力を失っている。その背景には、何があるのか。ロスチャイルドやソロス・ファンドなどの日本人唯一の投資アドバイザーを務めた草野豊己氏が解説する。
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政府・日銀は、為替市場で急激に円高が進行した時、「円売り介入」を行なってきた。近年では2010年9月15日、2011年8月4日、同年10月31日と、3回の単独介入を行なっている。
規模はそれぞれ約2兆1200億円、4兆6000億円、8兆円超で、いずれもそれぞれの時点で1日の介入額の過去最高を記録した。しかし、いずれも介入効果は短期間しか続かなかった。
2010年前半にはスイス中央銀行が、ユーロ安・スイスフラン高に対して、約1400億スイスフラン(約13兆円)を売ったが、為替変動による損失が143億スイスフランに膨らんだだけで、スイスフランが対ユーロで逆に11%も上昇した。
単独介入に効果がない背景にはヘッジファンドを代表とするリスクマネーの存在がある。介入が実施されると、為替市場には経済の実態と乖離した「歪み」が生じる。例えば、円高に進むのが自然な時に円売り介入(ドル買い)を行なうと、それによって発生した歪みを利用して利益を得ようとするリスクマネーの資金が大量に流入し、逆の取引(円買い・ドル売り)を行なってくる。結果的に政府・中央銀行は介入の効果を打ち消されてしまうのである。
※SAPIO2012年7月18日号