日本各地で跋扈(ばっこ)する中国人スパイ。彼らが特に暗躍するのが、米軍基地が集中する沖縄だ。彼らのスパイ活動は地元の反基地感情を利用しながら、ますます大胆になっている。ジャーナリストの井上和彦氏が警鐘を鳴らす。
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米軍嘉手納基地を一望できる「道の駅かでな」。米軍が今、最も頭を痛めている沖縄県中頭郡嘉手納町に設けられた観光施設である。嘉手納基地を一望できるここから撮影された米軍機の写真が中国人スパイに渡っている可能性が指摘されているのだ。米軍機の写真を撮っているのは地元沖縄のA氏。航空機マニアである。そして写真を撮らせているのが中国人B、沖縄に住む実業家だ。
ある時、中国人Bが、「道の駅かでな」で、熱心に米軍機の撮影をしていたA氏に接近し、仲良くなったという。A氏の写真技術を褒め称えてその気にさせ、米軍機の写真を購入するようになった。アマチュアカメラマンにとって、自分が撮った写真を買ってもらえることは何より嬉しい。
有頂天になったA氏が周囲に漏らした話によれば、彼は中国人Bから日当1万円程度の駄賃を貰って恒常的に米軍機の写真を提供しているようだ。やがて中国人Bは撮影内容を注文するようになった。
「今度、ステルス戦闘機F22ラプターが来たら、エンジン部分の写真が欲しい……」
そんな特異なオーダーにも、写真の腕前を褒められてほだされたA氏は快く応じているという。中国人Bは、A氏を抱き込み、米軍最新鋭機の細部写真を撮らせているのだ。要するに“代理スパイ”の可能性が高い。
「米軍はすでにこの一連の行為を掴んでいる」(地元メディア関係者)
また、A氏自身も薄々、中国人Bがスパイであることに気づいているようだ。A氏と接触したことのある人物は私に、その印象をこう話していた。
「どう考えてもおかしいんです。当初A氏は、中国人B氏から写真の腕前を褒められたことを周囲に自慢気に話していたんですが、最近はB氏の話になると口をつぐむようになっています」
私自身もこれまで何度も目撃してきたが、欧州各地で開催される各種兵器展示会では、中国人調査団(スパイ)が各国の最新兵器の細部をデジカメで接写したり、あらゆる角度から撮りまくったりしている。これは、完成品から“独自製品”を作り出すリバースエンジニアリングのための資料収集だ。つまり中国の兵器開発にとって、航空機の構造に明るいA氏の写真はたいへん貴重な情報なのだ。
そう考えると、中国人BがF22のエンジン部分の撮影を依頼したというのは、ある事実と符合する。
F22が世界最強と謳われるのは、ステルス機能だけではない。群を抜く運動能力にある。そしてそれは、排気口からの噴流の向きを変える推力偏向ノズルなどによって生み出されている。
現在、中国もアメリカに対抗してステルス戦闘機「J20」(殲20)を開発中だが、その外観はステルス機独特の革新的フォルムをしているものの、エンジンは、従来の標準的なジェットエンジンと同じであり、推力偏向ノズルは採用されていないようだ。だから中国は、F22が搭載するプラット・アンド・ホイットニー社製F119―100エンジンの特異な推力偏向ノズルの形状がわかる画像情報が欲しいというわけだ。
※SAPIO2012年7月18日号