ロシアのフィギュアスケーター、エフゲニー・プルシェンコ選手(29)の今季のフリープログラムを、日本人振付師・宮本賢二氏(33)が手掛けることが6月末報じられた。
プルシェンコ選手は2006年のトリノ五輪で金メダル、2010年のバンクーバー五輪では惜しくも銀メダル獲得に終わったが、人気実力ともに世界最高峰の現役スケーターで、日本人振付師にプログラムを依頼するのは初めてのこと。当代随一のスター選手の振り付けを日本人が担当するのは、異例中の異例であり、HPには、宮本氏とプルシェンコ選手とアレクセイ・ミーシンコーチの仲睦まじい3ショットが披露され、ファンの間でも大きな話題になっている。
宮本氏は元アイスダンス選手で、競技生活を引退後、振付師として活躍してきた。以前から日本人フィギュアスケーターの絶大な支持を集めてきた宮本氏の才能を、世界に知らしめたのは、バンクーバー五輪の高橋大輔選手のショートプログラムだろう。高得点をマーク(上位2人と僅差の3位。演技構成点ではプルシェンコを上回る)した高橋選手の「eye」を振りつけたのが宮本氏だった。
今回、宮本氏をプルシェンコ選手の振付師に抜擢したのは、ミーシンコーチの提案だったという。あるフィギュア関係者はこう解説する。
「ミーシンコーチはフィギュア界でチャンピオン・メーカーとして知られ、プルシェンコ選手以外にも、アレクセイ・ウルマノフ選手、アレクセイ・ヤグディン選手ら、歴代金メダリストを数多く指導してきました。
ただ、これまではジャンプの指導には定評ある反面、昨今のフィギュアスケートの演技構成点への偏重傾向に批判的な立場を採ってきました。それでも、2年後、地元で開催されるソチ五輪ではロシアとして絶対に負けるわけにはいかない。より演技構成での評価を高める必要があると判断したのでしょう」
4回転ジャンプを飛ぶ選手が増えてくるなか、ミーシンコーチはジャンプ以外の要素が金メダル獲得の鍵になると判断し、そこで白羽の矢が立ったのが宮本氏というわけだ。その背景には宮本氏が振り付けを担当していた高橋選手への評価の高さがある。別のフィギュア関係者が語る。
「実際、ミーシンコーチは、2012年世界選手権前のインタビューで、高橋選手を“アーティスト”と呼び、金メダルを獲得したパトリック・チャン選手よりも好意的なコメントを残しています。特に演技構成の面で絶賛しており、その振り付けを担当していた宮本氏への評価にも繋がっているようです」
高橋選手の活躍により世界に認められた日本人振付師が、2014年のソチ五輪を見据えて高橋選手の強敵となって立ちはだかることになる。