7月14日に公開される映画『ヘルタースケルター』。原作は、1990年代半ばに女性コミック誌で連載された異才の漫画家・岡崎京子さん(48才)の同名作品だ。監督の蜷川実花さん(39才)は、ずっと以前からこの映画を撮りたいと思い続けていたという。
「もともと岡崎さんの作品が好きで、『ヘルタースケルター』を撮るなら女性である私が絶対にやるべきだという確信みたいなものがありました」(蜷川さん)
蜷川さんが本作で問うのは、“見た目の美”への執着が、時に、女性の人生をも狂わせてしまいかねない現実世界の危うさだろう。“見た目”に対する執着は、女性ならではのものといえる。なぜなら、女性は生まれ落ちたときからずっと“見た目”に縛られて生きている存在だからと蜷川さんはいう。
「私は『美人は得よね』ということは『空が青いね』『砂糖って甘いね』ってことと同じくらい明白な事実だと思います。美人に生まれるか、そうではないかで生きる人生が全然違ってきますよね?
うちには妹がいて、すっごくかわいくて。父親の事務所が“いつでもデビューしたかったらいってね”って妹にだけいっていたっていうのが結構トラウマになって…。大なり小なり女の人にはそういう容姿のコンプレックスがあると思います。
それって圧倒的に不公平ですよね。でも女性はそういう前提のなかで、不公平な世の中に生きているんだっていうこと。そういうところから始まって、その中で“女”がどういうふうに生きていくのかを描けたらいいなと思っていました」(蜷川さん)
もうひとつ、蜷川さんがこの映画を撮りたいと思ったきっかけがある。フォトグラファー・蜷川実花として“旬”の芸能人、モデルを撮り続けてきた彼女だからこそ見てきた女たちの姿だ。
「立っている側と見る側、消費される女たちと消費する女たちとの“温度差”みたいなものが、気になっていたんです。“きゃ~、かわいい”といったかと思うと、“どうしちゃったの?”とか、“もう、ダメだね”とか、無責任に批評する大衆に対して、モデルや女優が、どれだけ必死の覚悟を持ってアイコンとしての位置に立ち続けているのかを知ってほしかったっていうのもあります」(蜷川さん)
※女性セブン2012年7月26日号