友達みたいな「母と娘」が増えているというが、生物学的、あるいは脳科学的に、何か理由はあるのだろうか? フジテレビ系『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)でお馴染みの脳科学者・澤口俊之氏が解説する。
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最近、テレビや雑誌で母と娘の関係をめぐり、「友達母娘」や「母との関係がしんどい」などの企画をよく目にする気がします。これはある意味、実によい着眼点だと思います。なぜなら、他の親子・家族関係と異なり、母と娘の関係はかなり独特なものだからです。
例えば、子供は、携帯電話から母親の声を聞いただけで、「親和性ホルモン」と呼ばれるオキシトシン(体内にも脳内にもあります)が増え、親和性や安心感が高まります。オキシトシンは、信頼や愛情にかかわる“愛情ホルモン”として知られており、分泌が高まると信頼も強まることが明らかになっています。
男女ともに存在しますが、霊長類では「母娘ボンド(「結合」の意)」というくらいに関係が密接な娘のほうが、母親の声を聞いたときにより強く影響を受けるということがわかっています。
こうした、母-娘における独自の関係性は、結婚に関しても大きな影響を与えます。これは、人間が進化の過程で獲得してきた、親族組織を中心とした共同体社会について考えれば明らかです。
文明社会における人類の「結婚」とは、その多くが、女性(娘)が氏族(家族が複数集まった社会)を出て、他の氏族の男性(息子)に嫁ぐという形態です。
この、“メスが自分の群れから離れ、他の群れにはいる”という行為は、ヒトにもっとも近い動物であるチンパンジーでも同様です。つまり、女性が自分の家族から離れ、距離的にも精神的にも遠い他の家族のメンバーになるという行為は、ヒトが進化し、社会が発展する過程で得てきた形式なのです。
この婚姻形態の場合、息子は自分の生まれた氏族に留まるのが基本ですから、母-息子関係は母-娘関係より長く継続します。つまり、「母息子密着型(過度な場合、マザコンといわれる)」は、進化的にみると「仕方がない」という側面があります。
※女性セブン2012年7月26日号