橋下徹・大阪市長の改革では、公務員の政治活動参加をどう制限すべきかが大きなテーマになっている。だが、実はそうした大阪の改革にあたって「国の仕組み、規制=法律」が壁になることがままある。橋下市長を支える府市特別顧問の原英史氏が解説する。
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「役所ぐるみの選挙」の問題は根深い。役所の職員が本業そっちのけで選挙に熱中してしまうといったことももちろん問題だが、より構造的な問題もある。知事や市長が選挙の時、部下にあたる職員たちのお世話になるとしたら、何が起きるか。
平素仕事をする時も、部下に頭が上がらなくなる。つまり、役人の言いなりで、リーダーシップを欠く知事・市長が生まれてしまう。上司の威令が組織内に及ばなければ、組織内の規律は劣化し、仕事の成果もあがらない。
大阪市の場合、数年前から、不適切な労使関係や、多発する職員の不祥事などが指摘されてきた。労使交渉のガイドラインを整備するなど、個別の対処はそれなりになされてきたが、いつまで経っても問題が消えない。その要因はやはり、この「役所ぐるみの選挙」だったのでないかというのが、前々号で紹介した野村修也氏(中央大学法科大学院教授)ら第三者調査チームの見立てだった。
こうした問題認識のもと、大阪市において、条例による規制強化が検討されているわけだが、ここで出てくるのが「法律の壁」だ。
一部の新聞記事でも、「地方公務員法が禁じていない部分まで条例が勝手に政治活動を縛るのは反則技だ」といった識者の意見が紹介されていた。法律上で「罰則は定めない」としているのに、一自治体が条例で「罰則を定める」としてよいのか、といった点が問題となるわけだ。
法律と条例との関係は、学問上も実務上も争いのある領域で、一筋縄ではいかない。そこで筆者は、大阪市特別顧問の立場で5月末、市職員と一緒に総務省の担当課を訪ね、市からの質問状を渡してきた。「条例で国に準じた規制をすることが認められるか」といった内容だ。ちょうど本誌のゲラが刷り上がるタイミングで、市への回答があったようだが、この件は、また改めてご紹介したい。
※SAPIO2012年7月18日号